離党が相次ぐ民主党、東西分裂が取りざたされる日本維新の会。それらに比べると、自民党は盤石…かと思いきや、そうでもない様子。内情は波乱含みだ。

 もともと安倍晋三首相は派閥などの党内基盤が弱く、昨年の総裁選でも、地方票で石破茂氏の後塵を拝した。だが、腹心の菅義偉官房長官が、維新の松井一郎氏と総選挙前から頻繁に会合を重ねてきた仲であり、橋下徹氏との共闘をにおわせて首相に上り詰めたのだ。

 総裁選で対決した石破氏や、さわやかな弁舌で人気を集める小泉進次郎氏との関係は微妙だが、閣僚や党役員を各派閥の推薦を受けずに選任して「官邸主導」を実現し、いまのところ党内を掌握している。「改憲」をキーワードに維新、みんなの党、民主党改憲派などに「部分連合」を呼びかければ、それぞれが政権への接近を図って、各党に動揺が広がる──という構図だ。

 ただ、安倍氏の後見役である森喜朗元首相が4月末の講演で、少々予言めいた発言をしている。

「人間は得意なところで失敗する。憲法も琴線に触れるが、得意になっていると、そのことでやられる」

 維新の石原慎太郎氏は、改憲や強気の外交を目指すよう安倍氏を鼓舞し、「公明党は足手まとい」と迫る。公明との協力が欠かせなくなった自民には連立組み替えの「踏み絵」だ。公明にも警戒感が広がる。安倍氏に距離を置く自民党議員の一人は、「安倍さんの改憲姿勢は急進的すぎて国民に警戒されている」と漏らす。

 安倍人気は、絶好調のアベノミクスや維新との関係に依拠している。それだけに、非主流派は政権に求心力がある間は黙っていても、何らかの要因で政権が失速すれば、いつまでもおとなしくしているとは限らない。

AERA 2013年5月6日・13日号