子どもの受験に熱心な「受験パパ」が増えているという。受験に臨むにあたって、ビジネスマンならではの感覚が活かされているそうだ。

 武内伸治さん(49歳・横浜市在住)は平日は仕事が忙しく、子供の受験勉強に関わることができない。土日に塾への送迎をしたり、学校の説明会に参加したりしてサポートした。勉強が本格化すると、大量の宿題が出されるようになり、娘は壁につき当たった。

「娘は要領よくこなすことができず、大量にたまったプリントを前に、何から手を着けていいかわからない状態でした」

 そこで生きたのが、伸治さんのビジネススキル。カレンダーを用意させ、いつまでに何枚終わらせるか把握させて、一日どれだけやればいいのか目標を立てさせたのだ。

「仕事も同じ。やるべきことが山積みされても、できることは限られている。目の前だけ見るから焦ってしまう。1週間、1カ月のスパンで計画を立てれば、今やるべきことが見えてくる」

 勉強はあえて見なかった。子どもが質問すれば、解法のヒントを出すだけ。

「自分でやるべきことを見つけて勉強してほしかった。回り道でも、その過程が大切だと思っていますから」

 学校選びでもビジネスマンの感覚を生かした。こだわったのは先生の態度。学校説明会などでは、個々の先生の動きまで厳しくチェックした。

「パネルディスカッションで、ほめ合ったり予定調和的なセリフに終始したりする学校は評価できないですね。先生同士が、いい緊張感を持って仕事をし、それぞれの役割をきちんとこなしている学校でないと」

 そうして選び抜いた第1志望の名門私立女子校に、娘はこの春合格した。

「それまでは仕事中心で、育児は妻に任せっきりでしたが、娘の受験に関わったことで、父親らしくなれた気がします」

AERA 2013年5月6日・13日号