2008年のリーマン・ショック後、男が外で稼げない「サラリーマン・ショック!」の時代が来た。

 就業者数はピークの1997年から11年までに313万人減ったが、その9割は男だ。一方で、成長分野の医療・福祉は、02年から11年までに就業者数が178万人増えている。その8割が女性で、高齢化を背景に、今後も増える見通しだ。女性の賃金は、不況のどん底だった97年以降も基本的には上昇トレンド。全国消費実態調査(09年、単身世帯)によると、30歳未満の女性の可処分所得は月21万8100円と、初めて男性を上回った。

 男たちが、これからは「女に食わせてもらおう」と考えるのは、自然な流れかもしれない。育児と家事の両立がしんどいなら、「給与の低い僕の方が辞める」という選択肢もある。

『男性不況』が評判を呼んだ第一生命経済研究所の永濱利廣主席エコノミストは、「専業主夫」を目指せという。男がもっと「家庭進出」すれば、女性が会社で活躍する余地が広がり、「ガラスの天井」(男社会の壁)は崩れるかもしれない。これこそ「男女共同参画社会」への近道ではないか。

 専業主婦願望から結婚相手を探す女性を避けがちな草食男子だが、妻に食べさせてもらう「妻食男」へと変身すればいい。

 国立大学大学院でフェミニズムを学び、男中心に稼ぐことに疑問を持つヤエコさん(仮名・41)は、非常勤講師を務める同期生と結婚したが、「超貧乏という現実に泣いた」と振り返る。

 非常勤講師だと、毎週1回講義をしても給与は月4万円程度。2人合わせた年収は300万円前後だった。ヤエコさんは研究者を諦め、出版編集者に転じて収入は倍増した。最初のボーナスでイケメンの夫の博士論文の学術書を100冊近く買い込み、全国の図書館などに送って夫の実績をPRした。夫が書いた論文は大手紙の書評欄で絶賛され、私大の准教授に。

「研究者同士のカップルはたくさんいるけれど、赤貧生活を強いられ、メンタルを病む悲惨な状況です。優秀な人も、みんな腐って、『終わコン』(終わったコンテンツ)になっていくのを見ていたので怖かった」

 こう言うヤエコさん、化粧っ気、飾りっ気はない。「旦那を食わせている」なんていう気負いもない。

「収入の高い方が補うのはお互い様。長い目で見れば、貸し借りはなくなり、お互い協力という貯金ができる」

AERA 2013年5月20日号