では、当の「ゆとり世代」自身は、どう思っているのか?
 「入社5年までは修業期間などと言うけれど、その間にリストラされたり、会社が潰れたりしたらどうするんですか? 10年後に働ける保障もないのに『いまは我慢して必死に働け』とはナンセンス」
 そう話すのは、ゆとり世代のカリスマブロガー、イケダハヤトさん(26)だ。目標となるロールモデルを上の世代が示せず、若者の士気を低下させている。上司の権威によって部下を従属させる「サル山型」の組織は、もう機能しない。イケダさんはそう指摘する。

◆自分の頃を思い出して
 それでは、どうすればいいのか。イケダさんの理想は、テレビの「戦隊モノ」のような組織だ。戦隊モノの戦士たちは、基本的に立場はフラット。それぞれが個性を生かし、敵を倒す。これこそ、今の若者にピッタリだという。
 「権威を振りかざして仕事をさせようという姿勢を、僕たちは心底嫌がっています。自分のよさを認めてほしい。その願いを理解し、育てない限り、若い人は働きません」
 企業の社員研修を担当するリクルートマネジメントソリューションズ研究員の木越智彰さん(30)に、若手社員を上手に育てるコツを挙げてもらった。
 これを見ると、意外にも基本的なことばかり。草食部下による混乱は、長引く不況で上司の負担が増え、部下に気を配る余裕がなくなったことも一因になっている。彼らに対しては、自分が新人だった頃を思い出しながら接することが重要だという。
 「管理職の中には、部下に気を使ったり、事細かに指示したりするのが面倒だという人もいます。でも自分が新人の時は、周りの先輩や上司が一つひとつ教えてくれたはず。コミュニケーションの第一歩は、部下の不安を知ることです」
 厳しい経済状況の中、上司自身がつい後回しにしてきた部下への「ひと手間」。そこに問題解決の糸口があるようだ。
 
◆木越智彰さんがアドバイスする草食部下と付き合う6カ条
(1)部下に興味を持つ
 部下に聞くべきことは多い。「どんな仕事をしてきたか」「やりたいことは」など、内容は何でもいい。「自分に興味を持っている」と部下が感じることが重要だ。
(2)職場の一員であることを感じさせる
 「職場になじめるか」「戦力として認められるか」。部下は多くの不安を抱えている。彼らを職場の一員として受け入れていることを、しっかり示す。忙しくても食事会を開くなど、機会を作る。
(3)関係者と部下をつなぐ
 組織で働いていく上で、将来の財産となるのが人間関係だ。「誰が何を知っているか」は、仕事を進める上でもっとも大切。部下には積極的に関係者を紹介する。
(4)仕事の意味や目的を明確に伝える
 「何のためにやるのか?」を納得できないと、彼らは動けない。「とりあえずやっておけ」は禁句。手間がかかっても、仕事の意味や目的をきちんと伝える。
(5)報告・連絡・相談のタイミングを指定する
 「ホウレンソウをするように」と命令するだけではだめ。多くの若者がつまずいているのは、その声を上司にかけるタイミングだ。「いつ時間を取るから」と、上司から具体的に提示する。
(6)経験をシェアする
 彼らは意外と、上司や先輩の経験談を聞きたがっている。先輩たちはいつどんな苦労をして乗り越えたのか。体験を話す中で「あせらなくてもいい」というメッセージも伝えられ、将来への視野も広がる。

AERA 3月25日号