今、大人だけでなく子どもたちもさらされている「ストレス」。蓄積すると、子どもの問題行動につながることもあるそうだ。そのストレス要因はどんなところにあるのか。

 脳科学が専門で小児心理医の成田奈緒子・文教大学教育学部教授は、子どものストレスの最も大きな要因は、二極化した親のミストリートメント(間違った接し方)だという。

「少子化や核家族化、地域の崩壊といった時代と環境の変化によるストレスは、程度の差こそあれ子ども全員が抱えている。でも、問題が起きる子と起きない子の差は、間違いなく親の接し方によるものです」

 二極化の一方は「子どもに良かれ」とあれこれ世話を焼く「過干渉な親」。このタイプは「自分が世話を焼かないと」と思い込み、子どもへの基本的信頼が欠如している。この“親不安”というストレスが子どもにストレートに伝わり、「親にさえ心配されるダメな僕(私)」という“子不安”を生む。

 些細な友達とのトラブルに干渉したり、学校のせいにしたりする親もいる。成田さんは言う。

「友達関係などは心の発達に必要な正常範囲のストレス。親がそれを排除すると、子どもの成長を阻害してしまう」

「過干渉な親」は高収入・高学歴層に多いように思われがちだが、収入や学歴が低いからこそ、「自分のようにならないでほしい」と無理してエネルギーとお金をわが子の教育につぎ込む親もいるという。

 もうひとつは、少数だが重篤な児童虐待を含む「無関心な親」。貧困や親が心の病を抱えるなど複雑なネグレクトになるリスクの高い家庭、もしくは親が子どもの育ちより「自分」を優先するケースだ。そのような親に育てられる子どもは「親から見捨てられるのではないか」という“見捨てられ不安”のストレスが強い。

 成田さんは指摘する。

「この層は数も少ないうえに、殴ったり殴られたりも経験し、暴力の加減がわかるので、逆に大きくなって大事件を起こす危険性は低い」

AERA 2013年4月29日号