目を覆わんばかりの傍若無人ぶり。写真を撮る鉄道ファン、「撮り鉄」モラルハザード(倫理の崩壊)による被害が、全国で多発している。特に最近では「撮り鉄の老害」が問題視されている。

 今回あらわになったのが「老害」、つまり年配の撮り鉄のモラルハザードだ。

 動画サイトには「撮り鉄の老害」として、還暦を過ぎたと思しき複数の男性が線路沿いの梅の木の幹にチェーンで三脚を固定したり、脚立に上って梅の枝を折ったりする、非常識な行状がアップされている。

 現場は、栃木県茂木町と茨城県筑西市を結び、週末にはSLが走ることで知られる真岡鉄道。走るSLの雄姿を撮ろうとする撮り鉄によるトラブルで、しばしば問題にもなる路線だ。

「若い人はやんない。年配者ばかり」と、真岡鉄道のとある駅の線路沿いに住む男性(71)。

 聞けば、被害がひどくなったのはここ2、3年。梅や桜の木だけでなく、線路内や線路わき、畑にも年配男性らが無断で入ったり、狭い路上に車を長時間止めたりと、やりたい放題なのだとか。男性は、非常識な撮り鉄たちに何度も注意をしているが、怒鳴り返されるか、しらん顔をされるだけ。男性の怒りは収まらない。

「以前も、線路沿いの畑に町内会で芝桜を植えたのですが、SLを撮る大人たちに踏み荒らされて…。あれはひどいよ」

 鉄道評論家の川島令三(りょうぞう)さん(62)は、すべての鉄道ファンに、(1)走行中の列車に向けてストロボをたかない、(2)駅のホームでは三脚を立てない、(3)立ち入り禁止区域には入らない──この3点は絶対に守ってほしいと呼びかける。

「ストロボをたいて運転手に恐怖感を与えてはいけないのは当たり前。三脚が倒れてホームに転落すれば、命にかかわる危険性があります」

 鉄ちゃんに、この声が届くだろうか。

AERA 2013年4月22日号