ストレスは大人だけのものではない…(※イメージ)
ストレスは大人だけのものではない…(※イメージ)

 生活の中で誰しも直面するストレス。実はこれ、最近は大人だけのものではないようだ。

「どうせオレなんてダメな人間」

 そう言ってうつむく子を、関西に住む勤続30年の保育士は、「大丈夫。先生は君のこと大好きやで」と抱きしめる。あれができない、これもできないと、親たちのわが子への要求が厳し過ぎるからだ。

「三つや四つの子が、どうせオレなんて、と口癖のように言う。小さいうちから結果を求められているからでしょう」

 自尊感情が持てない大人が言うならまだしも、生まれて3、4年で自分自身に失望するとは。この保育士は、十数年前から親によって強いストレスを受けている子どもが増えたと感じる。

「小さい頃から親が無理させてるなと感じた子は、大きくなると必ず爆発するみたい」

 そう話す首都圏在住40代の主婦はこんな例をあげる。町内に住む男の子は3歳から塾に通っていた。高学歴の両親には口ごたえをしたことがなかったという。小学校に入ってからも塾通いで、友達と遊ぶ時間が少なかったためか、高学年でいじめられた。そのたびに母親は学校に抗議。中学生になり、同じ学校の女子生徒の親から「うちの娘をストーカーしているようだ」という電話があったが、親は「単なる言いがかり」と突っぱね、しかも、息子にはそのことを伝えていない。ストーカー行為は次第にエスカレート、最終的に彼は逮捕された。

 都内公立小学校の教職歴30年の女性は、「父親のパワーが強い家庭は難しい」と感じている。

 以前担任した4年生のクラスに、屋上から石を投げるなど問題行動を起こす男子児童がいた。学校で荒れているのに家では従順。親から抑圧されている子どもの典型だった。その子は野球少年だったが、所属する少年野球のチームのコーチを父親が務めていた。父親は期待するあまり、試合に負けると夜中まで自宅で練習や説教が続いた。「やり過ぎだと言っても(夫は)聞いてくれない」と母親はうつむくばかり。女性教師は、

「夫婦どちらかの力が強いと正常なコミュニケーションが図れない。意見し合える家庭は問題が生じてもすぐ修復できる」

AERA 2013年4月29日号