中国国民も安全性を疑う中国産食品。深刻な健康被害も出ているという。

「頭も膝も、全身の関節が痛い。私の体はどうなるのか」

 毛沢東のふるさと湖南省の村、瀏陽市鎮頭鎮に住む羅金芝さんは、カドミウム中毒で体調不良が続く。昨年2月に大脳を手術した。まだ40代なのに、昼間もベッドで過ごす時間が増えた。近くの工場が半導体の材料をつくる過程で垂れ流した排水が地下水を汚染したせいだと言う。

 村で最初の死者が出たのは2009年。腫れた体が青黒く染まっていた。村人によると、これまで同じ症状で少なくとも20人近くが死亡した。日本の公害病、イタイイタイ病に似ていることから、「痛痛(トントン)病」と地元では呼んでいる。
 
 04年に工場が生産を始めてから、地元で取れる野菜や木の色が変わった。尿検査をすると、村人約3千人中500人余りから、基準値を超えるカドミウムが検出された。工場は11年に撤去されたが、未処理の汚染物が残され、雨が降ると流れ出す。

 羅さんたちが昨年、土を地元から離れた江蘇省の大学に持ち込み検査をしてもらったところ、カドミウム汚染は工場閉鎖前よりもさらに進んでいた。

「こんな汚れた土地で作った作物が売れると思う? 私たちは仕方なく食べている」

 羅さんらは、集団移転や賠償を求めている。村人たちは温家宝(ウェンチアパオ)前首相に直訴を企て地元警察に捕まったこともあるが、新たに首相となった李克強(リー・コーチアン)氏にも訴える機会を探る。

AERA 2013年4月22日号