文京区大塚2丁目、東京メトロ茗荷谷駅近くにあるお茶の水女子大学。「桜蔭会」という同窓会があり、有名女子進学校の桜蔭学園を創立した(撮影/写真部・工藤隆太郎)
文京区大塚2丁目、東京メトロ茗荷谷駅近くにあるお茶の水女子大学。「桜蔭会」という同窓会があり、有名女子進学校の桜蔭学園を創立した(撮影/写真部・工藤隆太郎)

 男女共同参画の流れのなかで、一時は「もう役割を終えた」とも言われた女子大。共学の大学に受験生が流れ、偏差値が大きく下落した女子大も多い。だがここへきて、「女子大人気復活」の動きが見られる。2013年一般入試では、東京女子大学で志願者が前年比17%増、実践女子大学で同15%増、大妻女子大学で同11%増になるなど、人気の出た女子大が少なくないのだ。

 人気の秘密は就職力。均等法施行から約30年たち、企業の管理職、技術者として一定の地位まで上り詰めた卒業生も少なくなく、社会からの評価は高いと、お茶の水女子大学生・キャリア支援センターの望月由起准教授は自負している。

「就職率は9割を超えています。芸術や心理などの特殊な分野の学科をのぞき、一般企業、官公庁に就職しようとして、できない学生はほとんどいないと思います。特に最近は、研究職につく理科系の女子学生を積極的に採用したがっている企業もあり、理系学部もある本校は格好の『ターゲット大学』になっているようです。一般職ではなく総合職、エリア総合職を目指す学生が多いのも特徴ですね」

 実際、12年10月から13年1月にかけて実施した学内向け企業説明会には、P&G、NHK、キリンビール、野村総合研究所、味の素、JTB、NTT東日本、三菱商事など、40社近い人気企業が名を連ねる。

「金融の一般職はもちろん、大手広告代理店、放送局、地銀の総合職など、同程度の入試難易度の共学の大学からはなかなか入れない人気企業にするっと入ってしまう学生が、毎年、結構いるんです」

 と明かすのは、フェリス女学院大学文学部の高田明典教授。

「学生たちは至って普通の女の子たちなのですが、『お嬢様大学』のイメージがあるせいか、特にある年齢以上の男性には、非常に受けがいいです。隠れた『お買い得大学』だと思いますよ」

 こうした女子大人気の理由を探るべく、本誌では女子大出身者150人に対しアンケートを実施、女子大の長所短所などを聞いた。そこで浮かび上がってきたのは意外な事実だった。女子大に行って良かったこととして、「就職が有利だった」(26.3%)以上に、「異性の目を気にせず、自由に振る舞えた」(44.7%)、「力仕事を含め、何でも自分たちでやる自主性が身についた」(28.9%)などの点をあげる人が多かったのだ。「男子にどう見られたいか」を意識せずに、のびのびと過ごせたことに価値を置く卒業生が多いようだ。

「男性の目がないと、女性同士の足の引っ張り合いがない『無菌室』のような安全な場所ができるんですよ。男子がいたらリーダーシップを発揮しないような子でも、自然と前に出る機会が出てくる。そこで力を蓄えて、外に出ていく。社会に出る直前のワンステップとして、いい場所だと思います」

 とお茶の水女子大出身で、女性経営者コミュニティーサイト「女性社長.net」を運営する「コラボラボ」代表の横田響子さん(36)は話す。

AERA 2013年4月15日号