ここのところ、異様なまでに強硬一辺倒に米国、韓国、日本への挑発を続けている北朝鮮。オバマ政権発足以来、挑発のたびに北は自分の首を絞める結果を招いてきた。中朝関係も、中国が望む改革開放を北は拒み、金正恩(キムジョンウン)氏はトップになってまだ一度も訪中していない。

「正恩氏と参謀たちは、かつて父親が核の脅しでもぎ取った成果を再現し、父の側近だった元老たちに『どうだ』と見せつけたいのではないか。だが北の手口はすっかり見透かされ、米韓に通じない。父親なら対話カードで局面転換を図るが、正恩氏はそのタイミングがわからない。それでますます威嚇をエスカレートさせている」

 早稲田大学の重村智計教授はそう話し、挑発目的は対米交渉での勝利にあり、「北が戦争に出る可能性はまず、ない」。ただ「一抹の不安」があるという。

「北は油もなく、兵器も旧式。戦争などできない。それを正恩氏が認識しているか。『十分戦えます』と取り入るゴマすりが側にいないとも限らない」

 緊張激化は金正恩氏側近の、崔竜海(チェリョンヘ)朝鮮人民軍総政治局長、金格植(キムギョクシク)・人民武力相、金英徹(キムヨンチョル)・偵察総局長ら強硬派にも好都合だ。緊張が高まるほど彼らの影響力が強まる。2010年の韓国軍哨戒艦爆沈、延坪島(ヨ ンピョンド)砲撃は彼らが主導した可能性が高い。

「吠える犬は噛まない。だが静かになったら要注意だ」

 韓国政府の対北政策に関わるA氏はそう話し、米韓軍事演習終了後の5月以降、韓国軍が警戒を緩めたスキを北は狙うと指摘する。

「ソウル一帯の停電とか、原発をゲリラ的に襲うとか、そうした攻撃が考えられる。北の犯行と証明されるまで長い時間がかかり、制裁も攻撃も受けない。原発に少しでも被害が出れば、核への恐怖が国民に広がり、北の核兵器の脅しの力も増す」

 金寛鎮(キムグァンジン)・韓国国防相は4日、「局地的挑発の可能性は常にある。テロ、爆発、暗殺が考えられる」と述べた。

AERA 2013年4月15日号