動物実験の廃止に向けて、化粧品メーカーの対応は分かれている。富士フィルムは「既に2008年以降、廃止している」とする一方、ポーラは「基本的にはなくしていきたいが、お約束できる期限はありません」という(撮影/写真部・工藤隆太郎)
動物実験の廃止に向けて、化粧品メーカーの対応は分かれている。富士フィルムは「既に2008年以降、廃止している」とする一方、ポーラは「基本的にはなくしていきたいが、お約束できる期限はありません」という(撮影/写真部・工藤隆太郎)

 資生堂が大きな一歩を踏み出した。

「動物実験の廃止を決定」

 2月28日にそう発表し、4月から新たに開発する化粧品と医薬部外品について動物実験をしないことを明らかにしたのだ。同社の知久真巳・品質評価センター長は言う。

「長く動物愛護と安全性を両立できるよう努力を重ねてきましたが、この度、動物実験をやらなくても安全性を保証できる体制が整いました」

 日本では、化粧品の安全性はそれぞれの企業が保証する必要がある。そのために動物実験が必要とされてきた。だが資生堂は、人工皮膚などを用いた「代替法」の研究を1980年代から進め、ようやく動物実験をしなくても安全性が保証できる体制を確立したという。

 一方で「医薬部外品」に分類される化粧品で新たな原料を使う場合には、国が目や皮膚に対する毒性試験を義務づけており、実質的に動物実験が不可欠になっている。つまり、はやりの美白化粧品などで「薬用」をうたう新商品を開発したければ、化粧品メーカーは動物実験をせざるを得ないのだ。

 だからこそ、資生堂の決断には大きな意味がある。成熟市場でも伸びが期待できる、スキンケア化粧品の売上高に占める医薬部外品の割合は半分程度。この分野で新商品を作りにくくなれば、企業としては大きなリスクとなるのだ。

 資生堂が大きく舵を切った背景には、欧州連合(EU)域内で3月11日から、動物実験を経た化粧品が全面的に販売できなくなったことがある。NPO法人「動物実験の廃止を求める会」の亀倉弘美理事は言う。

「化粧品開発における動物実験廃止を目指す運動はこの30年あまり、欧米で盛り上がりを見せ、ついにEUでの全面禁止が実現しました。日本の化粧品メーカーは『のれんに腕押し』の状況が長く続きましたが、EUの動きが追い風になっています」

 英国のLUSH(ラッシュ)では創業以来、動物実験をしておらず、廃止キャンペーンも展開してきた。日本の現状について、創業者のマーク・コンスタンティン氏はこう話した。

「化粧品メーカーが『美白が良い』などという価値を作りだし、その結果たくさんの動物が犠牲になっている。すごく怖いことだ。でも欧州では、消費者の9割が動物実験に反対で、動物実験をしていない商品を好んで購入している。日本企業も遠からず変わらざるを得なくなるのではないか」

AERA 2013年4月8日号