アベノミクスで景気が持ち直し、中小企業も受注が増えると見られている。ところが「秋ごろには倒産が増える」との見方が出ている。どういうことか。東京商工リサーチの友田信男情報本部長はこう解説する。

 景気が上向いて仕事が増えると、中小企業はなけなしの内部留保をはたいて材料を仕入れ、仕事をこなそうとする。だが、製品を納入しても売り上げが支払われるのは1~2カ月後。その間の資金繰りを補おうと、銀行に新規の融資を申し込んでも、応じてくれるとは限らない──。

「景気に関係なく、金融機関は『債務者区分』という格付けで融資を判断します。格付けが高い会社には貸し出しを増やし、低いところには減らすという姿勢を崩しません。中小企業の売り上げが伸びても、それが一過性のものか、会社の商品力や技術力が実を結び始めたのか、金融機関はその判断がうまくないのです」

 つまり、売り上げは伸びているのに資金繰りが追いつかず、倒産に至ってしまう恐れがあるわけだ。

 では、その転換期はいつだろうか。友田さんは「7月の参議院選挙が自民党圧勝で終わって以降」と予想する。

「公共工事の発注で、10月ぐらいから建設業を中心に売り上げが増えていくでしょう。しかし、そのときに融資の要請が通るのかどうか。金融機関が適切な見極めをできなければ、膨大な企業が倒産していくでしょう」

 さらに、その前段階で別の「悪材料」がある。中小企業の借金に対し返済を猶予するよう求めてきた中小企業金融円滑化法が、3月末で期限切れを迎えたことだ。

 この法律は民主党政権下の2009年12月に施行された。リーマン・ショック後の金融危機で資金繰りに窮した中小企業に再建の時間を与えるため、金融機関に対し、返済繰り延べや金利の減免に応じるよう努力義務を課した。

 金融機関が手のひらを返すように、債権取り立てに動けば、アベノミクスに冷や水を浴びせかねないと、金融庁は4月以降も極力、返済猶予に応じるよう全国の金融機関を指導している。だが、「ゾンビ企業をいたずらに延命させていいのか」といった批判も強く、甘い顔がいつまでも続くとは思えない。

AERA 2013年4月8日号