五輪招致に影を落とす体罰問題。「どう指導すればわからない」という声が寄せられている競技団体もある(撮影/写真部・岡田晃奈)
五輪招致に影を落とす体罰問題。「どう指導すればわからない」という声が寄せられている競技団体もある(撮影/写真部・岡田晃奈)

 スポーツ界に大きく波紋を広げた桜宮高校バスケットボール部の体罰問題。現在はバスケットボールの代表チームにも影響を与えているようだ。

 まるで取り調べのようだった。

 ある高校の男子バスケット部顧問は、バスケットボール協会関係者から、代表コーチ就任の打診を受けた。だが、ひと言目に聞かれたのは、

「おまえはやったことがあるか」

 選手への暴力という意味に違いない。生徒への暴力で懲戒免職になった大阪・桜宮高校バスケット部顧問が務めていた16歳以下の男子日本代表アシスタントコーチの後任探しは、かなり難航しているようだった。

「必死で探しているふうでした。でも、こんな時期にやる指導者はそういない」

 他校で顧問を務める教師数人からもメールが届いた。

「電話きましたか? こちらは断りました」

 この教師は数年前に体罰をやめた。「殴っても強くならないし、限界がある。もう今の選手には通用しない」と思ったからだ。やましいことはないが、指導者としてのキャリアアップになる代表コーチを断った。

「いつまでさかのぼって体罰行為を罰するのかもわからない状態でのオファーは受けられない。協会は体罰の有無にだけナーバスになっているが、今日から変わる、根絶に向けて努力しますと宣言して、みんなで努力すればいいのに」

AERA 2013年3月18日号