今年に入り、ダニを媒介とした新たな感染症で少なくとも5人の死亡が確認され、「ダニ騒動」が日本中に広がっている。

 騒動の元凶は、マダニが媒介する「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)」というウイルス性感染症。ブニヤウイルス科フレボウイルス属の新型のSFTSウイルスによって引き起こされる病気だ。発熱や倦怠感、食欲低下、嘔吐、下痢、腹痛などの消化器症状が出て、血小板が破壊され、場合によっては死に至る。2009年、中国で初めて症例が報告され、2年後にウイルスが特定された。

 なぜ今、日本で問題になっているかといえば、厚生労働省が1月末、日本で成人女性1人が昨年秋に死亡していたと発表し、疑わしい患者の情報提供を全国の医療機関に求めたからだ。

 今年に入り急に注目されたSFTSだが、これから大流行する兆しはあるのだろうか。厚労省結核感染症課の中嶋建介・感染症情報管理室長は「過剰に心配する必要はない」という。

 感染症に詳しい国立感染症研究所の西條政幸ウイルス第一部部長も、こう話す。

「もともと患者数が非常に少ないですし、すべてのマダニがSFTSのウイルスを持っているわけでもない。中国の流行した地域では、ウイルスを持っていたマダニは5%程度とされています。子どもが野原や草むらで遊んでも心配ありません」

 とはいえ、中国では、マダニが活発に活動する春から秋にかけてSFTSが発生した。暖かくなるこれからの時期、野山に出かける人も多いだろうが、この時期はマダニも活発に活動するようになる。

 万が一、マダニに咬まれた場合、どう対処すればよいのか。ブニヤウイルス科のウイルスは酸や熱に弱く、消毒用アルコールや台所用洗剤で咬まれた箇所を洗い流すのが効果的だという。西條氏は、「咬まれてもすぐにSFTSを心配する必要はありませんが、発熱などの症状がある場合は念のため、病院で受診してほしい」と話す。

AERA 2013年3月11日号