エジプトで墜落した熱気球。日本気球連盟によれば1973年の結成以降、日本では熱気球の墜落死亡事故は確認されておらず、比較的安全とされていきた (c)朝日新聞社 @@写禁
エジプトで墜落した熱気球。日本気球連盟によれば1973年の結成以降、日本では熱気球の墜落死亡事故は確認されておらず、比較的安全とされていきた (c)朝日新聞社 @@写禁

 2月26日にエジプト・ルクソールで観光用熱気球が炎上、墜落し、日本人4人を含む19人が死亡した。目撃情報などから着陸直前にバーナー(燃焼部分)と燃料ボンベを結ぶホース付近からガスが漏れて引火したとみられ、パイロットが着陸前に下ろしたロープとホースが絡まってガス漏れを起こした可能性も指摘されている。

 ツアーを企画したJTBグランドツアー&サービスから委託を受けて気球遊覧を現地旅行会社に手配したゲートオブアフリカの村上新一郎代表によれば、今回事故を起こしたスカイクルーズ社が契約していた保険会社から遺族に支払われる金額はわずか7万円程度だ。

「気球のかごにかけた保険ですので、乗員の21人で割ると、申し訳ないほどの額になります」

 今回のエジプトの気球事故ではこれ以外にJTBが旅行業約款の特別補償規程に基づいて死亡補償金を遺族に支払うと明言しており、その額は最大で2500万円となる。だが、観光ジャーナリストの千葉千枝子さんによれば、これはあくまで「特例」。今回の気球遊覧は、メーンの行程とは別に組まれたオプショナルツアーだからだ。

「通常、オプショナルツアーは観光客が自発的に選ぶので、パッケージ旅行を主催した旅行会社に補償金を支払う義務はありません。特に、気球のようなアクティビティーや危険なスポーツは補償対象外です」

 オプショナルツアーは催行会社が別だったり、参加者が一部だったりするため、パッケージツアーと比べて安全対策が不十分になることもあると千葉さんは指摘する。

 さらに、事故に遭って損害賠償を求めるには、現地で裁判をしなければならない。レジャーの法律問題に詳しい金子博人弁護士は、こう話している。

「個人で海外旅行傷害保険などに入るべきだが、保険の約款で危険なスポーツは適用外になっている場合もある。『事故は起こり得る』と認識し、旅行の内容や契約を慎重に確認することが重要です」

AERA 2013年3月11日号