いつ、どんな体型のときに着るかわからないので、サイズは7号から13号までスライド可能。袖ぐりも広くなっている(撮影/写真部・久保木園子)
いつ、どんな体型のときに着るかわからないので、サイズは7号から13号までスライド可能。袖ぐりも広くなっている(撮影/写真部・久保木園子)
汎用タイプの登場で、この先は葬儀屋さんが着せることもありそう。正しい着せ方が書かれたガイドも製作した(撮影/写真部・久保木園子)
汎用タイプの登場で、この先は葬儀屋さんが着せることもありそう。正しい着せ方が書かれたガイドも製作した(撮影/写真部・久保木園子)

 ずらりと並んだドレスの中から手に取ったのは、大きなリボンが目を引くアイボリーのロングドレス。鏡の前で当ててみると、万感の思いがこみ上げてきた。私にも、その日が来るのね…結婚式の衣装合わせではない。こちら、ウエディングドレスならぬエンディングドレス。つまり人生最期のときに、お棺のなかでご遺体が着る衣装だ。

 そう言われれば、ウエディングドレスとは少し様子が違う。色の淡さは同じだが、デザインがシンプル。体がやつれて見えないようギャザーなどでわざわざふっくら見せるための工夫もされている。そして何より構造が違う。背中が大きく開いているなど、横たわったご遺体に、着せやすい設計になっている。

「仕事で、数え切れないほどマネキンに服を着せてきた経験が、役に立っているかも」

 そう話すのは、エンディングドレスを販売する「アンビエンス」の代表、高橋信子さんだ。高橋さんの本業は、デパートのショーウインドーなどを飾るディスプレー業。きっかけは、3年ほど前に行った知人のお葬式だった。

 お棺のなかでご遺体が着ていたのは、よくある白い着物。

「自分のときは、もっと自分らしく最後のドレスアップをしたい。そう思い立って、知り合いのデザイナーに相談。まず自分が、自分のお葬式で着るためのドレスを、試作したのが始まりでした」

 そのドレスが好評で、人づてに注文が舞い込んだ。最初は知り合いにだけ作っていたものの、昨年、本格的にエンディングドレスのブランド「エテルナ」を立ち上げた。

 これまで購入したのは60代以上の女性が多く、ほとんどが「自分用」。友人と連れだって、まるでウエディングドレスを選ぶように、楽しそうに試着し、買っていくという。

「つい『着る日が楽しみ』と言って、お友達を笑わせた女性もいました。いつか必ず訪れる死をポジティブに受け入れ、自分へのご褒美にと買われる方が多い。一方男性は、怖いとか縁起が悪いと言って、試着はもちろん、ご自分用に買われた方もいまのところいません」

AERA 2013年3月4日号