ミカンを多く食べるほどに動脈硬化になる割合が少ないことも、三ヶ日地域の住民調査の結果から判明した(撮影/写真部・岡田晃奈)
ミカンを多く食べるほどに動脈硬化になる割合が少ないことも、三ヶ日地域の住民調査の結果から判明した(撮影/写真部・岡田晃奈)

 この時期、ビタミンCが多いミカンは風邪の予防に効く、と昔から言われている。だが、それだけではない。超高齢社会を迎えるなか、骨粗鬆症(こつそしょうしょう)の予防にもなるという研究結果が公表された。

 骨粗鬆症は、年齢を重ねるに従い骨密度が低くなり、骨がもろくなった結果、骨折しやすくなったりする病気。がんや脳卒中のようにすぐに生命に関わる病気ではないが、骨密度は短期間では回復しないため、年をとって骨折すれば、そのまま寝たきりになる危険があり、決して侮れない。

 冬の果物であるミカンを毎日食べて、この骨粗鬆症を予防できるかもしれない──。そんな研究結果を、果樹研究所カンキツ研究興津拠点(静岡市)で食品機能学が専門の杉浦実・主任研究員が、米科学誌「プロスワン」で発表した。

 同研究所では以前から、果物や野菜に多く含まれている抗酸化物質のひとつ「βクリプトキサンチン」(β-CRP)に注目。このβ-CRPの血中濃度が高い閉経後の女性は骨密度が高い、という関連性を見いだしていた。

 その結果をもとに、杉浦さんは2005年度、温州ミカンの産地として有名な浜松市三ヶ日地域住民699人を対象にした調査を開始。すると、閉経女性のうち「ミカンを毎日1個、または食べない日がある」という血中β-CRP値が低いグループの骨粗鬆症発症リスクを1とすると、「毎日4個食べる」というグループでは0.08と低いことがわかった。

 冬に必ずミカンを食べる、という人には朗報かもしれない。だが、あまり食べない人にとって「1日4個」は難しいかも。

 ならば、ジュースではだめなのか。杉浦さんは言う。

「ジュースだと、果汁を搾る工程でβ-CRPが果物そのものの半分程度に減るほか、果物に含まれる糖分を液体で短時間に飲むことの悪影響も否定できません。果汁を飲む回数が多いほど糖尿病の発症率が高くなるという報告もあります」

 ポンジュースを製造・販売するえひめ飲料(松山市)が、この難問をクリアする商品を生み出した。「POMアシタノカラダみかんジュース」。ミカン1個分のカロリーで3個分のβ-CRPを摂取できるという。3月に通信販売を始める予定だ。

AERA 2013年2月11日号