岡本豊さん(65)。36人のキャディーを束ねる統括班長の関君子さん(58)と。関さんは、必要最小限のアドバイスを心がけている。「口を出しすぎると、お客様が楽しめないから」。そんな関さんには「何も言うことがない」と、岡本さんは全幅の信頼を寄せる(撮影/写真部・久保木園子)
岡本豊さん(65)。36人のキャディーを束ねる統括班長の関君子さん(58)と。関さんは、必要最小限のアドバイスを心がけている。「口を出しすぎると、お客様が楽しめないから」。そんな関さんには「何も言うことがない」と、岡本さんは全幅の信頼を寄せる(撮影/写真部・久保木園子)

 ゴルフ週刊誌「パーゴルフ」のランキング接客部門で12年連続トップを独走するゴルフ場がある。東京都心から車で約90分。千葉県大多喜町にある「千葉夷隅(いすみ)ゴルフクラブ」だ。
 
 79年の開業以来、このゴルフ場で働く総支配人の岡本豊さん(65)は言う。

「交通の便が悪いので、キャディーなどの接客対応の質を高めることで独自性を出しました」

 接客する従業員によって差が出ないよう、当初はマニュアルをトップダウンで決め、押しつけた。ある程度平準化してからは、サービスの質をより高めるため、従業員の声を積極的に取り入れるようにした。

 ある従業員が試して好評だったものは、全員で共有し、「標準」サービスとする。そのプロセスを30年以上、積み重ねてきた。たとえば雨の日は、少しでもプレーしやすいように、休憩時間に雨ガッパを乾かす。あるキャディーの提案だったが、いまや当たり前の光景になった。

 常連客やコンペの幹事を務めた来場客など約700人のデータを共有する。プレーの特徴や食事の好みまで、事細かに情報が記されている。おかげで経験の浅い従業員でも同じサービスが提供できるという。

 このゴルフ場はロストボールが少ないことでも知られている。秘訣があった。

「どこでロストボールが出やすいかをデータ化し、ロストボールが出やすいラフは刈り込むなどしている」(岡本さん)

 ボールを探さなくていいため、時間の短縮になり、プレーヤーのストレスにもならない。ボール代もばかにならないご時世だから、懐にも優しい。

AERA 2012年12月31日・2013年1月7日号