地域性はうどん以外のメニューに表れる。九州では地元で人気の「ゴボウ天」が出る。沖縄には「スパムおむすび」がある(撮影/谷本結利)
地域性はうどん以外のメニューに表れる。九州では地元で人気の「ゴボウ天」が出る。沖縄には「スパムおむすび」がある(撮影/谷本結利)

 2000年に兵庫県加古川市に1号店を出店以降、12年で660店以上を出店。これまで一店も閉店していない。

 地域のうどん屋として出発しながら、47都道府県すべてに出店を果たし、いまなお店舗数を増やしているのが、丸亀製麺だ。

 なぜ、こんなに強いのか。理由のひとつは味だという。とはいえ、うどん業界は老舗も多い。いくら安くても、昨今の消費者には「そこそこおいしい」なんて通用しない。

 しかも、麺もだしも全国共通ときている。富士山の麓には太くて硬い麺が特徴の「吉田のうどん」があり、秋田県南部では細くてつるんと食べられる「稲庭うどん」がいる。うどんには言わずとしれた地域のスタンダードがあるが、どこの地域にも丸亀は存在する。

 実は、そこに逆転の発想があった。

「うどんには、地域性があるようでなかった」

 というのが、東日本で店舗開発を担当する押立浩二さんの実感だ。

 ただし、ひとつだけ「暗黙のうちに守り続けたもの」がある。丸亀の製造マニュアルにも文字化されておらず、「触り心地」や「噛みごたえ」だけを頼りに伝えられた、うどんのコシだ。

 スーパーで買ううどん玉は、軟らかくて食べやすい。でも、うどん店が軟らかい麺を提供すると、客は「本物っぽくない」と顔をしかめる。軟らかいうどんは、家庭の味なのだ。

 コシを重視した丸亀の麺は、軟らかくもなく、かといってむやみに硬くもない。

「絶妙な頃合いが、日本人が暗黙のうちにもっていた『本物感』に近かったのでは」(押立さん)

AERA 2012年12月24号