寅さんはOK、山下清はNG 「浮浪罪」とは一体?

AERA
 今年9月、奈良県警が発表したニュースが波紋を広げた。

「6月下旬ころから9月16日深夜までの間、田原本町内において、働く能力がありながら収入もないのに仕事もせず一定の住居を持たないでうろついていた男(54歳)を、軽犯罪法違反で現行犯逮捕しました」

 住居不定、無職でうろついているからといって逮捕するなんて、やりすぎ感がある。これではホームレスや放浪の旅をしている人たちは、みんな逮捕されかねないだろう。男はいったい何をしたというのか。

 管轄の奈良県警田原本署に事件の経緯を聞いてみた。

 9月16日午後10時半ごろ、田原本町宮古の京奈和(けいなわ)自動車道に自転車で侵入している男がいると通報が入った。県警高速道路交通警察隊が現場に向かうと、そこは歩行者や自転車の通行が禁じられている「自動車専用道路」だった。

 このため隊員は男に警告。さらに、自転車も盗品の疑いがあるとして、田原本署員に連絡した。自転車は他人名義だったが男は窃盗を否定し、結局、軽犯罪法1条4号の「浮浪の罪」を適用したという。

 そもそも、「浮浪の罪」とは何なのか。軽犯罪法1条4号にはこう書かれている。

「生計の途がないのに、働く能力がありながら職業に就く意思を有せず、且つ、一定の住居を持たない者で諸方をうろついたもの」

 軽犯罪法1条4号を文字通り解釈すれば、ホームレスの多くは逮捕されてしまうのか。日本一周をしている旅人や、日本中を放浪した天才画家の山下清はどうなのか。寅さんは? 松尾芭蕉や西行も逮捕されるのか。

 元検事の大塚隆治弁護士(埼玉弁護士会)はこう見る。

「ホームレスは当てはまるでしょう。放浪している人も厳密にいえばあてはまる人はいますが、日本一周などの目的があれば『浮浪』にはあたりません」

 家事事件、一般民事事件に詳しい広瀬めぐみ弁護士(第二東京弁護士会)は、次のように話す。

「ホームレスも社会の脅威になっていなければ逮捕まではされないでしょう。芭蕉や寅さんも同じです。ただ、山下清さんは結構難しい問題をはらんでいる。あの風体でそこここを歩いていたら、何とかしてほしいと思う人もいるかもしれません」

AERA 2012年12月10号

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