女性の保守化が止まらない。かつて弱者救済や不戦の誓いを訴えてきた女性たちが「強い日本」を求めている。足元には、女性特有の正義感と社会や将来に対する切実な不安があった。

 若者が行き交う東京・原宿の街角。茶髪につけまつげ、ミニスカート姿の女性の手には「原発再稼働が日本経済を救う」というプラカード。2人の子どもを乗せたベビーカーには日の丸。24歳の主婦、にゃんにゃんさん(ハンドルネーム)は、脱原発デモが行われる日に合わせ、一人で街頭に出て代替エネルギーのない脱原発を批判してきた。

「使える原発を止めて火力発電を増やしたことで年間3兆円が無駄になっている。日本の経済がダメになったら子どもだって守れない」

 質問してくる若い子たちにもそう伝えている。少し見上げる目線と口調に幼さが残る。

 お笑い芸人の親族の生活保護受給問題に、「働いている人と働かない人が同じ生活をするのは『誰も働かない風潮』をつくるだけ」という怒りがわいた。半年前に「花時計」という団体に入会した。外国人参政権や夫婦別姓に反対する愛国・護国団体だ。2010年に設立、会員約450人のうち6割以上が女性。代表のマダムさん(ハンドルネーム、50代)によると、震災や出産、民主党政権への不満から入会する女性が多いという。

 ネット上でタカ派的な発言をする「ネトウヨ」はこの数年、街宣活動やデモも始め、そこに参加する女性たちは「女子ウヨ」とも呼ばれる。だが、「花時計」は高圧的な言動を避ける穏健派。会員同士はネット上のハンドルネームで呼び合い、私生活は聞かない。仕事や家事の合間に、女性としてどう訴えたら効果的かを話し合う。

 創立メンバーの一人であるマダムさんも落ち着いた知的な雰囲気。旅先でチベット人に出会ったことが入り口だった。

「チベットの人は、見た目も穏やかな気質も信仰心も日本人と似ています。チベットの姿は日本の未来だと感じて、政治に興味を持つようになりました」

 夫も活動を応援してくれるが、職場には言っていない。

AERA 2012年12月3日号