政府に納めるお金と政府から受けるお金やサービスで、高齢者と将来世代で生じる大きな格差が問題になっている。

 この世代間格差に詳しい島澤諭(まなぶ)・総合研究開発機構主任研究員は次のように話す。

「わが国の世代間格差は先進国でも最悪の水準なのに、高齢化の進行による高齢有権者の増加と若者世代の低投票率とにより、政治の視線はもっぱら高齢者層に注がれ、高齢者に有利な受益・負担構造の既得権を打破するのは一筋縄ではいかない」

 2005年版の経済財政白書(内閣府)の試算では、国民の負担と受益を世代別にみると、60歳以上の世帯は生涯で4875万円の黒字で「もらい超」になるが、20歳未満を含む将来世代は4585万円の赤字で「払い超」だ。

 こうした八方ふさがりの状況を打破するため、「ドメイン投票方式」や「年齢別選挙区制」といった聞きなれない選挙制度も話題になっている。

 例えば、親子4人家族なら、母と父が未成年の子どもに代わって1票ずつを加算して投票するのがドメイン方式だ。少子化大国のドイツやハンガリーで検討されたが、まだ導入されていない。「政治を決めるルールの大胆な改革が必要」(考案者の米人口学者、ポール・ドメイン氏)とされる。

 また、井堀利宏東京大学教授らは年齢別選挙区を提案。選挙区を地域でなく、人口比に応じて世代ごとに議席数を決め、各世代の代表を選出する。

 さらに竹内幹・一橋大学准教授は「余命投票方式」を提示する。年齢別選挙区と組み合わせ、世代ごとの平均余命に応じて、議席を配分する方式だ。余命が長い若い世代の割合が大きくなるのがポイント。余命で一票の格差がつくが、生涯の「投票価値」は原則平等となるという。

AERA 2012年12月3日号