本格的な普及期を迎えた日本のスマホ市場に、これまでは無名だった海外メーカーが続々と押し寄せている。

 スマホ市場を切り開いた米アップルと韓国サムスン電子の「世界2強」の知名度は抜群だが、中国ZTE(中興通訊)や台湾HTC(宏達国際電子)、韓国パンテックなど、まだまだ日本では知られていない企業もある。だが、世界市場で見ると、ZTEは世界4位、HTCも同5位という海外列強の一角(12年7~9月の順位)。こうした「黒船」の襲来がいま、国内スマホ市場に地殻変動を起こしている。

 対照的に、国内勢は退潮の一途だ。アップルが「iPhone」を日本に投入したのは08年だが、それ以前まで首位争いを演じていたシャープやパナソニック、NECといったメーカーのシェアは、当時より10~20ポイントも減少。「安泰なのは高齢者向けに『らくらくホン』をつくる富士通ぐらい」(業界関係者)という有り様だ。

 総務省が7月に発表した「情報通信白書」は、劣勢の理由をこう分析した。

「スマホ以前」の時代、キャリアは、メーカーに対して端末の仕様から台数まで指示を出し、メーカーはそれに従って生産・納入する、という蜜月関係を築いていた。キャリアは、「iモード」など独自サービスの付加価値を高めて顧客を囲い込むことができ、メーカーも容易に安定収益が見込めたからだ。

 年5千万台という国内需要に依存し、海外市場の開拓に本腰を入れてこなかったため、端末は独自の進化を遂げた。「ガラパゴス」といわれる所以だ。

 ソフトバンクがiPhoneを販売し始めた当初も、他のキャリアやメーカーは「普及するはずがない」と高をくくっていたという。だが、その予想は早々に裏目に出る。周回遅れを挽回しようとスマホ開発に着手したメーカーを待っていたのは、最先端の半導体チップを思うように調達できないという厳しい現実だ。

 国内各社の出荷台数は、世界で見れば微々たるもの。首位の富士通でも年800万台だ。対して海外の列強メーカーは5千万~2億台超とケタが違う。チップは米クアルコム社がほぼ独占供給しているが、生産量にも限りがある。優先的に供給されるのは、当然ながら「多く買う客から」となるわけだ。

AERA 2012年11月26日号