日本の尖閣国有化を加速させた、香港活動家らによる島の上陸。中国政府と敵対している彼らの上陸の本当の狙いは何か。今回、香港で最も有名な民主活動家の一人、梁国雄(リョン・クオック)氏が来日、独占インタビューを試みた。梁氏は、今回の尖閣上陸の一件について次のように話す。

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「香港政府に何ら決定権はない。決めているのは中国政府だ。中国政府は中国内部の混乱を恐れて、短期間だけの騒ぎを期待していた。香港の活動家ならばそれが可能だ。もし中国から出航した場合は、福建からだけではなく、上海、山東などあちこちからあふれ出てきて、収拾がつかなくなる」

 しかし、それでは中国に香港人が利用されているだけではないか。

「それは違う。我々は長く同じ主張を続けてきて、いつも拒否されてきた。今回は異例のことに過ぎない。次はないだろう。実際、11月にも出航を計画していたが、認められていない。我々は民間で、政府ではない。石原慎太郎氏を日本政府がコントロールできないのと同じだ」

 では、尖閣問題の解決はどこにあるのか。

「尖閣は一度中国に返還すべきだ。その後で共同管理、共同開発などの話し合いをすればいい。それから、日本は過去の戦争への謝罪が大事だ。河野談話は十分な謝罪となっていない。いま日本人が何を言っても中国人や香港人に信頼されないのは、そのためだ」

 このあたりになると、中国共産党の主張とも相違点はなくなってくる。

 梁氏は90年代に日本領事館前で座り込みを行い、以来日本渡航のビザが出なくなった。その後、香港人はビザなし渡航が可能になり、今回は入管も無事に通れた。今回が初訪日だが、日本には好感を持っている。梁氏によれば、映画監督の羽仁進氏の娘で香港を拠点に作家として活動していた羽仁未央さんと交際したこともあったという。梁氏は一時、米国への渡航禁止措置を受け、いまも中国大陸へは立法会議員としての公式訪問以外の理由では入れない。

「政府の意向に合わない運動をやっている人間はどこの国からも嫌われるものだよ」

 梁氏はいたずらっぽく笑った。話を聞いていると、日本で反核や人権の運動に古くからかかわっている人々と会っている感覚に陥る。いわゆる反米左翼的なスタンスだ。そう考えると、中国の一党独裁も天安門事件も尖閣問題も、同じ文脈で闘争の対象になることは理解できる。

AERA 2012年11月26日号