クリア率が5%を切る超難関のゲームをご存じだろうか。その名も「リアル脱出ゲーム」。密室で「謎解き」に挑み、解けたら脱出する、参加型イベントのことだ。

 参加者はチーム編成が基本になり、宇宙基地や牢獄、開かずのマンションに閉じ込められたなどといった設定で、制限時間内の脱出、すなわちクリアを目指す。

 謎解きに使われるのは主にクロスワードパズルだ。空欄を埋めるには、まず部屋の中に隠されているヒントを探さなければならない。理系的な思考が要るものもあり、数人での分業も必要だ。

 リアル脱出ゲームの運営会社スクラップは、東京で2軒の常設型の施設を運営している。

 しかし、クリア率が5%を切るようなムズいゲームが、なぜウケるのか。筆者も実際に体験してみた。

 東京の「原宿ヒミツキチオブスクラップ」。裏原宿の地下テナントには、16の丸テーブルが置かれ、壁には洋館を模したカーテンがかかる。この日のゲームは、コミック『金田一少年の事件簿』とのコラボイベントだ。6人1組で謎解きにかかる。平日の夜7時過ぎ。仕事帰りの男女も多く、場内は満員だ。

 参加費は前売りチケットで2800円。原作さながらの推理と謎解きをしながら、60分以内に殺人事件の真犯人を探すのがミッションだ。

 筆者のチームは、上智大学の学生3人に、30代女性が2人。初対面で緊張するが、人見知りしている場合ではない。ともかく協力して知恵を絞る。残念ながら最後の問題でつまずき、クリアはならなかったが、終わるころには、すっかりうち解けていた。

 関西大学の安田雪教授は自著『ルフィの仲間力』で、コミック『ONE PIECE』が売れる理由を、「仲間」と共に「試練」を乗り越える「物語性」にあると指摘する。それはこのゲームにもあてはまる。

 リアル脱出ゲームの運営会社スクラップ代表の加藤隆生さん(38)はこう言っている。

「大人は部活を求めている」

 部活と違い、職場では組織の論理もあって純粋に目的めがけて突っ走ることはできない。ゲームは、働く世代にとって青春のやり直しなのだ。

AERA 2012年11月19日号