来春開学に向けて努力していた3大学をいきなり不認可、そしてわずか5日で、「やっぱり認可」。手続き的には、まさに「暴挙」としか言いようがない。だが、荒療治でも何かを変えようとした彼女の考えを評価する声もある。

 リクルートキャリア(東京)特別研究員の海老原嗣生さんは、田中大臣の行動をこう評価する。

「野蛮なやり方ではあるが、野蛮でないと進まないこともあると思う。大学新設には、だれかがストップをかけなきゃいけなかった。ただ、編入予定だった短大生の救済策などの詳細を役人ときちんと詰めておらず、単なる大臣の思いつきのように見えてしまったのは、残念です」

 文部科学行政に詳しい教育ジャーナリストの渡辺敦司さんは、このほど、創造学園大学を運営する堀越学園が、度重なる内紛や経営の混乱で解散命令決定を受けたことが、田中大臣の頭に引っかかっていたのではないかと推測する。設置審議会が「異常な状況」と断じたこのケースは特殊で、一般の新設大学を同一視するのは乱暴だが、

「現行の制度にはとても任せておけない、という政治家としての勘が働いたのではないか」

 と見る。ただ、「単に大学の数を絞り、入試を厳しくすれば、質は向上する」という考え方には渡辺さんは懐疑的だ。

「今の高校生にはそもそも、偏差値の高い大学に入るために努力しよう、という意欲があまりありません。今は大学はだれもが入るところなのです。大学の数を規制するのならまず、社会が『大卒』に何を求めているのか、明確にすべきでしょう」

AERA 2012年11月19日号