LINEの公式アカウントとして政策情報などのメッセージを時折発信する「首相官邸」が、違法ダウンロードについての啓発を呼びかけた。首相官邸アカウントの登録者は約46万人。LINEの主力ユーザー層となる若年層にピンポイントで周知させるのが狙いだ。

 10月1日の改正著作権法施行から、およそ1カ月が経過した。

 インターネットで動画や音楽をダウンロードしただけで、2年以下の懲役や200万円以下の罰金を科される可能性がある、この改正著作権法。厳しすぎると思えなくもない改正だが、背景にはCDやDVDなどの販売不振がある。

 ある民間機関が10年に行った調査によれば、違法配信サイトなどからの年間ダウンロード数は、正規有料音楽配信の10倍に相当する約43億ファイルになる。売り上げが下降線をたどるのは「この影響がある」と、協会は指摘する。

 では、今回の改正著作権法で、具体的にどのような行為が刑罰の対象になるのか。

 大前提として、て「YouTube」や「ニコニコ動画」といった動画配信・共有サイトで「視聴する」行為は適法で、刑罰の対象外。懲役や罰金といった刑罰を科される恐れがあるのは、権利者の許諾を得ずに違法アップロードされた楽曲やテレビ番組などの著作物をダウンロードする行為だ。

 この著作物が「有償」か「無償」かで刑罰の対象になるかどうかが分けられる。

 著作権問題に詳しい弁護士の福井健策さんは次のように説明する。

「有償著作物とはDVDなどで販売されているものか、オンデマンド放送で有料視聴する番組のこと。つまり、お金を支払って購入できるDVDやCDのデータは有償著作物であり、これらをダウンロードすることで刑罰の対象となる可能性がある」

 DVD化されておらず、オンデマンド有料放送などもされていない番組は「無償著作物」の扱いとなり、刑罰対象にならない。この点が実に複雑だ。

「有償・無償の区別が曖昧で、ネット上の動画や音楽が違法アップロードなのかの判断も容易でないのに、ワンクリックで重い刑罰の対象になることには批判もあります」(福井さん)

 刑罰対象の前提となるのが、違法性の認識の有無。違法ファイルとしての認識があったという事実が確認できた場合が、刑罰の対象となる。でも、一体それってどう確認するのだろうか。

AERA 2012年11月12日号