ここのところ日本企業はどの業界でも、事業環境がめまぐるしく変化している。変化に対応するには、人を育てるしかない。優秀な人材を育成すべく、社員らの知らないところで動いている企業もある。

 三井化学人事部は、本社部長クラスや主要関連会社社長など経営幹部のポスト数を把握し、各ポストごとに複数の候補者をリスト化している。リストは取締役らで構成する人材育成委員会に報告され、各人がポストにふさわしい能力を身につけられるよう、人事部主導で計画的に研修や異動が行われる。

 同社がこの「サクセッションプラン」を整えたのは一昨年のこと。人材開発グループリーダーの小澤敏氏は言う。

「従来は年功序列と役員の目の届く範囲でやってきたが、それでは経営幹部にふさわしい人材が育たなくなった」

 社員本人には、自分がリストに入ったことは知らされない。だが、国内事業畑から海外子会社の社長へ異動させたり、突然の指名で経験の少ない部門の研修に出したりすることで、成長と自覚を促す。既に成果が出つつあるという。

「優秀な人材を見いだし、育てられるようになった。今後は、より下の課長クラスを対象にグローバル経営人材を育てたい」

 経営人材とは、今後は「グローバル経営人材」のことを指すようになると考える人事担当者は少なくない。

AERA 2012年11月12日号