女優・二階堂ふみがアエラの表紙撮影のためスタジオに入ってきた瞬間、「役に体を貸している」という彼女の言葉がぴったりだと感じた。力強い目と栗色の髪、体のラインが「お人形」みたいだから、じゃない。自分を外から冷静に見下ろしているような独特の雰囲気がある。

「外見は商品なので、好きでも嫌いでもありません。自分のためというより、役のために備えた体にしておきたいので、それなりに努力はしています」

 おしゃれとメークが好きな自称“普通のギャル”。18歳で思春期を脱却し、「しっとり系」を目指しているらしい。だが、同世代の女子には負けないと自負する映画愛ゆえに、外見も脳みそも、体力も、すべてが演じることに向けられている。

 いつの間にか映画に夢中だった。両親と通った那覇市の小さな映画館「桜坂シネコン琉映」(現・桜坂劇場)で、小学校低学年のころには一本2時間以上の作品を鑑賞。外で遊ぶのは苦手で、本を読んで自分の世界をつくるほうが好きだった。ロリータファッションに没頭し、気づけば友だちがいなかった。

「みんなと同じ服よりは、好きな服が着たいと思う。寂しいと感じることはなかったのですが、完全に浮いていました」

 モデルにスカウトされ、高校から上京。友だちも増えた。周りが進路を意識するにつれて、女優として生きていくことを決意し、映画に対してさらに貪欲に考えるようになったという。

「最近は、感動する邦画になかなか出合えません。お金が集められないと映画は作れないのかもしれませんが、商業的なラインを誰かがぶち壊さないと名作は生まれないと思います」

AERA 2012年10月29日号