米大統領選は終盤戦になっても、オバマ大統領と対立候補ロムニー氏の大接戦となっている。その裏で、寄付金を有権者から集める競争が過熱している。

「ビヨンセ・ノウルズ」

 という差出人をメールの受信箱で見つけたら誰でもびっくりするだろう。

「ジェイ(注:夫のジェイ・Z)と私は、ニューヨークで近く、オバマ大統領と会うことになっているの。そこにあなたにもいてほしい! 航空券やホテルは心配しないで。大統領とのディナーが当たるくじに自動的に登録されるから、今すぐ、5ドル、寄付してね」

 もちろんビヨンセが直接出したメールではない。実はオバマの選挙対策本部から、支持者に一斉に送られてきたものだ。

 ビヨンセだけではない。ジェイ・Zのコンサート、女優サラ・ジェシカ・パーカーと大統領夫妻とのパーティーと、次々招待メールが届く。

 大統領候補テレビ討論会での「一発逆転」に成功した共和党の対立候補ミット・ロムニー前マサチューセッツ州知事とは、依然として接戦が続く。大激戦を反映し、選挙資金面でも熾烈な戦いは続いていた。

 連邦選挙委員会(FEC)によると、8月末までにオバマ・民主党陣営は6億9千万ドル、ロムニー・共和党陣営は6億3300万ドルの選挙用寄付金を集めた。11月の投開票日まで2カ月もあるこの時点で、2008年選挙時の約7億5千万ドルというオバマ陣営の「過去最大」だった集金額を、今回は両候補が凌駕する勢いだ。

 5~7月、ロムニー陣営への寄付金がオバマ陣営を凌いだのは、大口寄付を集める団体・スーパーPACへの金額が多かったからだ。これに対しオバマ陣営は、ビヨンセまで動員した「5ドル」の積み重ねで獲得した寄付金のほうがはるかに多い。まさにオバマ対ロムニーの選挙は、庶民対富裕層という支持層の違いを浮き彫りにする。

AERA 2012年10月29日号