ズズッと盛大に音を立てて麺をすする。これぞ日本が世界に誇る食文化! ところが、いまどきの女性たちの中には、うまくすすれない人もいる。

 女性に人気のラーメン店。記者がアツアツのラーメンを勢いよくすすろうとした瞬間、ふと気づいた。周りで麺をすする音がしないのだ。チマチマと麺を2、3本ずつ吸い込む女、レンゲで麺を口に運んではモグモグする女……。なぜ女たちはすすらないのか?

 この夏、タレントの平愛梨さんのラーメンの食べ方も話題になった。箸を持つ手をくるくる回し、麺をパスタのように巻きつけて食べる。「個性的すぎる」「汁が飛び散らなくていいかも」とネット上では賛否両論。舌でも食べられる方法を追究したのだとか。

 しかし麺は、すすってナンボだ。四国B級ご当地グルメ連携協議会常任顧問の奥山忠政さんも言っている。

「すすることによって、空気がスープや麺を巻き上げ、麺は適温に冷まされ、口腔や鼻腔は香りで満たされます。すする音も味わいの重要な要素です」

 だが最近、練習してもすすれない女性がいるという。

 都内の証券会社に勤める40代の女性も「すすれない女」だ。新入社員時代、ラーメンを食べるのに四苦八苦していたら先輩女性社員にからかわれた。

「やっぱり女の子は、ズズッてしない方がいいわよね~」

 これがトラウマとなり、人前で麺を食べられなくなった。人気女優が屋台でかっこよく麺をすするドラマを録画し、持ち上げる麺の本数、息の吸い方の研究もしたのだが、「食べるのに必死で、おいしいと思えない」。

 高橋矯正歯科クリニックの高橋治医師によれば、「鼻づまりなどで鼻呼吸と口呼吸の連携がうまくできないこともすすれない原因」という。高橋医師は「エアすすり」「水すすり」「麺すすり」の3ステップの練習法をホームページで指南している。

AERA 2012年10月22日号