少子高齢化がすすみ、50代以降全員が介護を担う時代が目前となっている。そんな今、先進企業は着々と対策を講じている。

「全員介護」時代を前に、企業はどんな対策を講じているのか。

 東京の大手食品メーカー総務部で管理職を務める男性(54)は、九州に住む両親(ともに84歳)が老老介護で持ちこたえていたが、今年6月に父が倒れて入院したのをきっかけに施設入所の選択肢も考え始めた。

 そんな折に、会社が外部委託する機関が実施した介護セミナーに参加した。配布された資料の一番最初のページにあったのは、「介護と仕事の両立事例」。きょうだいで継続的に話し合いながら、親への精神的サポートを交代で担い、地域の資源を活用しつつ、退職することなく乗り切った事例だった。

 状況が刻々と変化する介護は、柔軟な働き方へのニーズが高い。例えば、通院への付き添いなど、突発的な事態への対応のために、介護休暇や有給休暇を1日単位や半日単位の「コマ切れ」で利用できる制度は助かる。

 大手システム開発会社「日本ユニシス」は、在宅勤務日に、私用のために一時的に仕事から離れる「中抜け」を認めている。在宅勤務日は7.5時間の「みなし勤務」としているが、中抜けする時は、その時間帯を事前に知らせておけばよい。

「在宅勤務日なら、地域のケアマネジャーとの相談に出かけ、すぐに仕事に戻ることも可能。時間も場所も介護をする人の都合に合わせられる。柔軟に複数の制度を選びながら利用できることで、私自身、母の介護の時に役立ちました」(広報部・小田村和江さん)

AERA 2012年10月22日号