ワーク・ライフ・バランスは、これまでは主に育児の視点で語られてきた。だが、50代以降全員が介護を担う時代を前に、先進企業が着々と対策を講じているのは介護だ。

 介護に直面する人が最も多いのが50代。介護をしている人の3割以上を占める。この年代は、企業ではマネジメント層が多く、男性の比率も高い。

 コンサルティング会社「ワーク・ライフバランス」が2年前に組織診断を実施したある企業では、3~5年以内に親が要介護になる可能性があると回答した人が40%という結果が出た。男性が主体の会社だった。

 花王では、厚生労働省の介護発生率のデータを基に、自社の将来予測を行った。2008年時点で要介護の家族を持つ社員は12人に1人だったのが、10年後には6人に1人と倍増することに。さらに、23年には5人に1人が介護責任を負うという、驚きの数字が割り出された。共働き社員が増え、独身の男性も激増傾向にあることもわかった。

「特に男性で介護にあたる人が増えてくることが予想され、その対策が急務だとわかりました」(花王人材開発部課長・座間美都子さん)

 要支援・要介護に認定される人の割合が2ケタ台に跳ね上がるのが75歳以上。25年には、団塊の世代がその年齢に達する。その頃には、施設不足で介護難民が大量に発生し、共働きの団塊ジュニア世代の多くが家庭内介護を担うという事態も予測されている。きょうだい数が減り、共働きや独身者の比率も高い状況を考えると、

「男女関係なく、50代以降はほぼ全員が仕事と介護の両立の課題を抱える時代になる」

 と東京大学社会科学研究所の佐藤博樹教授は言い切る。

AERA 2012年10月22日号