「原発映画」に注目が集まっている。DVDの売れ行きが好調で、自主上映が展開される旧作も急増中だ。

 福島第一原発事故後、多くの関連映画が作られてきたが、この秋も注目のドキュメンタリーや劇映画が相次いで公開される。

「フタバから遠く離れて」は、町ごと埼玉県の廃校に移動した福島県双葉町の避難民たちの「時間」を記録した。舩橋淳監督が双葉町民を撮ろうと決めたのは、町が廃校に引っ越したニュースを聞いた時だった。

「僕には昔からドキュメンタリーは時間を撮るものだ、という思いがあった。時間は偏見や思い込みを突き崩す。この町を定点観測することで、原発の矛盾が出てくる予感がしたんです」

 過去を振り返っても、ドキュメンタリーを中心に多くの原発映画が製作されてきた。

 米国なら、原発の安全性についての内部告発をテーマにした「チャイナ・シンドローム」。あるいは、原子力関連企業の闇に迫った「シルクウッド」。どちらもサスペンス仕立てで見せる。

 昨年公開の「カリーナの林檎~チェルノブイリの森~」は、ベラルーシ出身の少女カリーナを主人公に、離散した家族の絆さえも断ってしまう原発事故と放射能を描く。

 福島の事故後、原発映画を見る側の意識は変わった。「祝(ほうり)の島」を配給するポレポレタイムス社の中植きさらさんは言う。「震災以降、原発の新規立地をずっと食い止めてきた祝島(いわいしま)(山口県上関町)の人々に注目が集まり、映画に映った島の人たちの姿も、言葉も、より強さを増して伝わるようになったと感じます」

「当事者が負った重い荷物を見る側も一緒に背負う」(舩橋監督)ことは、福島で作られた電力を消費し続けてきた私たちに科せられた十字架でもある。

AERA 2012年10月22日号