フェイスブックでつながりたいのは若者だけじゃない。仕事や子育てを終えた世代がつながる意味は、さらに大きい。

 都内に暮らす西脇知和さん(64)は2日に1回の人工透析が欠かせない。お供は映画とフェイスブック。病室にノートパソコンやスマートフォンを持ち込んで、会ったことのない「友達」とやりとりする。

「5時間も注射針につながれ、痛いし貧血を起こすこともあります。現実がつらいから、別のところに意識を向けたい。現実逃避かもしれませんが、私の癒やしになっています」

 フェイスブックでは、日々の出来事や体調について語り合ったり、政治や原子力発電に関する情報を集めたり、主張したり。友達の大半はフェイスブックだけの付き合いだが、名前を明かしているからこそ匿名のツイッターより信頼性の高い情報が手に入りやすいと感じているという。

 生年月日や出身校、居住地域を入力すれば関係がありそうな人をリストアップしてくれるフェイスブックの機能で、高校の同級生とも“再会”できた。

「40年ぶりでしたが、今では毎日やりとりしています。退職後に趣味で始めたパソコンで、生きがいを見つけられた私は幸運でした」(西脇さん)

 厚生労働省がまとめた2012年版高齢社会白書によると、一人暮らしをする60歳以上の男性の約3割は、電話やメールを含む「会話」の頻度が「2日~3日に1回」以下。女性の場合も約2割が同じ状態にある。

 誰にも等しく訪れる心身の衰えが、外出はおろか電話やメールさえ阻んでしまうことは、想像に難くない。家に居ながらにして知人と「会話」できたり、過去のつながりを取り戻せるフェイスブックは、高齢者の生活を大きく変える力を持っている。

AERA 2012年10月15日号