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 都内の公立小学校の入学式で、ある通知が配られた。「保護者間交流に関するお願い」と記され、内容はこうだ。

「学校外での有志による保護者サークル等の開催について自粛をお願いします」

 保護者間、特に母親同士の会合を禁止する「ママ友会禁止令」だ。トラブル防止を目的に、特定の親同士で仲良くせず、学校が開く保護者会を通じて幅広くつきあうように求めている。

 学校関係者によると、2年前から入学式で配布するようになったという。中学受験を控えた5、6年生の保護者には、友だちの志望校を学校に問い合わせることも自粛するよう呼びかけている。同校では過去に、私立中学校に合格した子の親になりすまし、入学辞退の電話を中学校にかけた親がいたからだ。

 通知ではこのほか、ママ友同士のトラブルにつながりがちな学校への子どもの送迎も控えるよう求めている。フェイスブックなどのソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)の利用や、メールアドレスの交換もだめ。保護者間の連絡は、学校の連絡先名簿を利用するように、としている。

 保護者の行動を事細かに制限する学校に対して、

「やりすぎじゃないか」

 と、保護者から反発の声が上がることもあるという。だが、禁止令にはきっかけとなった事件がある。教師や女子児童に対する誹謗中傷がSNSサイト上に名指しで書き込まれて嫌がらせの電話などがあり、児童が転校に追い込まれた。

「保護者同士のトラブルに関する相談が毎年少なからず寄せられます。学校は教育機関であり、このようなトラブルに対応する人員を配置しておりません」

 通知にはそう書かれ、トラブル防止のためのルールであることへの理解を求めているが、問題が起きても学校は関知しないという意思表示にも読める。

 校長は取材に対して、

「危機管理のためには、不確かな情報のやり取りが子どもたちを混乱に巻き込む恐れがあり、保護者同士、保護者と学校、教師が顔を合わせて心を通わせることが重要です」

 と話す。

AERA 2012年10月15日号