橋下新党「日本の維新の会」の人気に、早くも陰りが見え始めている。旗揚げした当初こそ話題をさらったが、その後政策・人材などに関して様々な問題が指摘されるようになった。各分野の専門家らは次のように話す。

 精神科医の香山リカ氏は「次々と仮想敵をつくっては叩いていく橋下氏の手法は一時の憂さ晴らしにはなる。橋下氏は、市民感情を利用して支持を集めてきた」と指摘する。とすれば、橋下氏が話題を提供し続けない限り、埋没しかねない。ある自民党大阪市議は言う。

「橋下氏が打ち上げた大阪都構想の法案が早々に成立しました。橋下氏は、こんなに早く成立するとは思っていなかったはず」

 大阪都構想が実現に進み始めた今、民主、自民などの既成政党を「決められない政治」と批判する対立軸はつくりにくい。

 橋下氏はかつて「頼れるのは『ふわっとした民意』だ。ものすごい応援になるが、一瞬にして離れていく」と語ったことがあるが、今がまさにそう、ということか。

 となると、打開策は一つしかない。橋下氏は一貫して否定しているが、自身が衆院選に立候補することだ。

 先ほどの市議も指摘するが、橋下氏は困難や敗北を経験すると「維新の立ち上げ」「維新の国政挑戦」など「より大きなアドバルーン」を上げ、局面を打開してきた。例えば、7月の羽曳野市長選で維新が首長選として初敗北を喫すると、橋下氏は、「国民は地元密着の話よりも国の方向性の話に期待している」

 と批判をかわした。大阪の政界関係者は口をそろえる。

「『2万%出ない』と言っていた府知事選に出た。『出ない』を額面通りに受け止める人はいませんよ」

AERA 2012年10月8日号