ウイルスががん細胞だけを殺す!?(※イメージ)
ウイルスががん細胞だけを殺す!?(※イメージ)

 苦しい副作用や後遺症がつきものだったがん治療を、革命的に転換させる「日本発」のウイルス療法が臨床試験で成果を上げつつある。

 これまでの治療では、投薬などでがん細胞とともに正常細胞にもダメージを与えてしまうことが問題だったが、ウイルス療法ではそうした欠点をカバーすることができるという。開発者の藤堂具紀・東京大学医科学研究所教授(52)に聞いた。

──どんな仕組みでウイルスががん細胞だけを殺すのですか。

 元来、がん細胞は、正常細胞に比べてウイルス感染に弱いという性質があります。種類に関係なく、どんなウイルスでもがん細胞に感染すると、よく増えるのです。なぜか。

 ウイルスは、生命の最小単位である細胞という形をなしておらず、代謝もしないので自力では子孫を増やすことはできません。このため、「宿主」となる他の生物の細胞の中に入り込み、その細胞から子孫を増やすのに必要な素材とエネルギーを奪い、自分の遺伝子のコピーを大量につくり出す。これが増殖です。

 細胞の中で大量に増殖したウイルスは、やがてその細胞を破壊して外に出ると、別の細胞に感染します。この過程で、ウイルスは宿主の細胞に次々とダメージを与えて病気を引き起こす。

 肝心なのは、ここからです。

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