最近、パチンコは若者のギャンブル離れなどもあり、客の減少傾向が続く。危機感を募らせる業界は利用客の裾野を広げようと、イメージアップと話題性の獲得に躍起だ。

 AKB48の「不動のセンター」前田敦子の卒業公演が行われた8月27日、AKB48関連ではもうひとつニュースがあった。メンバーの歌や踊りを液晶画面で見られるパチンコ台が、導入されたのだ。東京・新橋駅前の2店には午前10時の開店前に約50人ずつが列をつくった。

 パチンコ台でしか見られない映像にのせ、12週連続で毎週新曲が先行発表されるのがウリ。一般紙を含む多くのマスコミが取り上げた。都内のパチンコ店店員は「AKB目当てと思える客も来ています」。10月下旬からは、モーニング娘。の新旧メンバーらの新台が並ぶ予定だ。

「時間消費型レジャーへの転換」。パチンコ業界で近年、よく聞かれる言葉だ。意味するのは「貸し玉」の低価格化。かつては一律1玉4円で貸していたのを、台によって1玉1円や0.5円、さらには0.1円で貸す店が増えている。理屈上は客は1玉4円に比べ、1円だと4倍、0.5円だと8倍長い時間打て、ギャンブル性は薄れる。パチンコをより「遊技」に近づけ、賭博に抵抗のある人や「軍資金」の少ない人にも足を運んでもらう狙いだろう。

 こうしたパチンコ店側の取り組みは企業努力であり、むげに否定されるべきものではないだろう。ただ、一方で通常の企業活動の結果としてギャンブル依存症などの生活破綻者が続出している現実を、厳しく受け止めているかは疑問だ。

AERA 2012年10月8日号