彼らがウォール街に戻ってきた。9月17日、オキュパイ・ウォール・ストリート(OWS)の運動が誕生して1年を記念して、「ハッピーバースデー」が流れる中、約1千人の若者や市民運動家が同時多発的に交差点や大手金融機関前を埋め尽くし、声をあげた。

「銀行は公的資金を受けた。99%の僕らは破産した」
「資本主義は悪だ」

 思い思いの段ボールのプラカードをかかげ、米金融資本主義の象徴、ニューヨーク証券取引所前でのデモを目指した。しかし、ニューヨーク市警は周辺を封鎖し、若者や運動家数十人をあっという間に逮捕した。容疑もわからず、警察官にプラスチックのワイヤーを後ろ手に掛けられ、呆然とする若者たち。辺りは「シェイム(恥を知れ)!」という怒号に包まれた。

 だが、1周年でこれほど大規模なデモを展開したにもかかわらず、OWSは活動が死に絶えたように見える。

 1年前、OWS発祥の地、ウォール街近くのズコッティ公園には、キッチン、医療班、メディア班、瞑想コーナーまで設けられたが、今は完全にビジネスマンのランチスポットに戻っている。8月末、公園から200メートル南に離れたウォール街の入り口にあるトリニティ教会前に、10人足らずの若者が戻ってきたが、みなホームレス。教会に寝泊まりしている。

「キッチンもなくなったし、寄付も尽きたので、自分たちで食べていくしかない」

 とOWSのPRを続けているイブラヒム・アワダラー(27)。バイトをしながら主に米東部の「占拠地」を回って運動を広めてきた。「この国で何が問題なのか、人々に示し、話し合い、それを排除する運動を広げていく必要がある」との信念から、就職もせずPRを続けている。

AERA 2012年10月1日号