9月にも予算枠を使い果たし終了するエコカー補助金。家電エコポイントは終了後に大反動に見舞われた。それを見通せず失敗したのがシャープだが、そもそも「エコ補助金」はトータルで、国民全体に利益をもたらしたのか。

「スズキとしては(エコカー補助金の)延長は求めない」

 スズキの鈴木俊宏副社長は8月2日、四半期決算の発表の席上でこう話した。「補助金によって生産・販売の山や谷が大きくなるのは決していいことではない」と述べ、「液晶テレビの結果を見れば明らか。補助金はやめにしていただきたい」とも発言した。

 ひと足早く2011年3月で終わった家電エコポイントは、主に薄型テレビに付与された。商品券などと交換できるポイントは価格の約5%。地デジ対応ならさらに5%上乗せ。地デジ対応なら最高で3万6千ポイントで、エアコンの4倍だった。

 シャープは8年間テレビ販売トップを続けた。その分、エコ政策による需要増減の影響も最も受けた。年末にエコポイントの終了を控えていた10年夏、当時の片山幹雄社長は新聞紙上で、駆け込み需要を意識して「国内向けはテレビの在庫を意図的に積まないといけない」と語った。一方、「需要を先食いした結果、需要が予想以上に冷え込んだ」とも。首都圏で営業を経験した30代の社員は「空前の売上高を前にエコポイント後の惨状まで考えられなかった」と振り返る。

 家電だけではない。冒頭のスズキ副社長も心配しているように、構造的には自動車も同じだ。

 人口減少や少子高齢化、若者の車離れ、買い替えサイクルの長期化で販売は趨勢的に下落し続けている。現在、エコカー補助金やエコカー減税などのエコ効果で「年間販売台数500万台復活」となっているが、これとて、1990年の777万台に比べると、4割近く落ち込んでいる。おまけに買い替え需要中心で、エコ効果は単なる先食いなのが実態だ。

 家電もそうだが、お得感からその分、大きく高価なエコ商品を買っても、製造・流通・販売と従来品の廃棄処分の段階まで含めると、トータルで本当に節電、省エネ、省資源になるのか。

AERA 2012年9月24日号