超氷河期の就職難の中、性的少数派(LGBT)の学生たちは、さらに厳しい試練にさらされている。一方、優秀な人材を確保するため、LGBT学生に照準を合わせる企業も出てきた。

 レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル(両性愛者)、トランスジェンダー(性同一性障害も含む)の総称であるLGBT。電通総研が今年2月、約7万人に実施したインターネット調査では、日本人の5.2%、実に20人に1人がLGBTという結果が出た。だが、国内ではまだまだ偏見があり、学生たちは、就活で公表すべきか、どんな働き方ができるのか、迷っている。

 LGBT学生は面接でカミングアウトすべきかなど、就活で多くの課題を抱えている。内定後にカミングアウトしたLGBTの学生が会社から内定を辞退するよう迫られた例など、LGBT学生の就活には厳しい現実がある。

 この現状を憂慮するのは、東レ経営研究所の渥美由喜(なおき)氏だ。

「LGBTの学生には、企業が求める優秀でグローバルな人材が多い。LGBTへの理解がない企業は、優秀な人材を逃している」

 渥美氏は、LGBTの学生は以下の傾向があると指摘する。

(1)自分について掘り下げて考え、自立心も強い(2)日本より生きやすい場所を求め、語学の習得に励む人や、留学経験者も多い(3)将来への不安から、資格を取得したり高学歴の人が多い(4)マイノリティーに対する温かい視点や柔軟性がある──。まさに、企業が求めるグローバル人材の宝庫といえる。

 外資系企業は、そうした優秀な人材の確保に積極的だ。世界最大級の投資銀行ゴールドマン・サックスは、3年前からLGBTの学生向けの就職説明会を開いており、今年は11月15日に予定している。

 日本IBMは昨年から、日本で結婚が認められない同性婚のカップルも結婚祝い金の支給対象にした。グーグルは、同性のパートナーでも扶養家族と同様の福利厚生サービスを受けられるようにしている。

 一方、LGBTに目を向ける日本企業はまだ少ない。

AERA 2012年9月24日号