今年の夏も暑かった。これは地球温暖化の結果なのか。その主犯は二酸化炭素なのか。

 日本の気象学者は、地球温暖化の主な原因をどう見ているのだろうか。アエラでは、日本気象学会に所属する研究者らを中心に、アンケートをした。

「最近の地球表面の気温上昇を指す『地球温暖化』の主な原因が、二酸化炭素などの温室効果ガスにある」

 との学説に対して、強く賛成する「1」から、強く反対する「5」までの5段階評価をしてもらった。約100人の専門家に送り、半数近い46人から回答が寄せられた。

 結果は、賛成にあたる「1」と「2」を合わせると33人で、約7割が温室効果ガス主因説を支持。反対にあたる「4」「5」は4人で1割弱だった。中間の「3」に「その他」を合計すると9人で、約2割だ。

 この結果からも、日本の気象学者はおおむね、地球温暖化の温室効果ガス主因説を支持していると考えられる。

 だが、いみじくもIPCCの第4次報告書が地球温暖化と温室効果ガスの因果関係を「very
likely」(可能性がかなり高い)と表現したように、コンセンサスは決定論的に位置づけられず、議論の余地があることは確かだ。

 にもかかわらず、肝心のその議論が盛り上がっているようには見えない。これは記者を含めた多くの素人にとって、不思議なことではないか。

 この傾向は、海外とは大きな違いがあるようだ。横浜国立大学の伊藤公紀氏によると、統計研究者ハンス・フォン・シュトルヒが気候科学の専門家にアンケートして欧米の専門誌に発表したデータでは、「賛成」は全体の3分の1程度にとどまった。

「アンケートの対象をだれにするかで、結果は大きく変わってくる」

 と伊藤氏。温室効果ガス主因説については、「賛成」はシミュレーションを重視する物理屋に多く、「反対」は観測に重きを置くフィールド屋に多い傾向があるそうだ。

「日本の気象学は、天気予報の数値シミュレーションの系統が強いので、結果も『賛成』が主流になる」

 ある事象の真理が追究されていない場合、それを求める多様な思考と議論があってしかるべきだ。それがあまり見えないのは、気象学会の体質なのだろうか。だとすると、気象学者の発言の信憑性が失われてしまう。

AERA 2012年9月24日号