東京の中心部に、約7キロメートルにも及ぶ新しい断層が見つかった。しかし、こうした断層に過剰な反応を示すことを懸念する声もある。

 この断層を「活断層に近いものだと考えられる」とする専門家の意見がある一方で、共同研究者の山崎晴雄・首都大学東京教授(地震地質学)は異なる見解を示す。

「別の場所で起きた地震の影響などで、地滑りを繰り返した可能性が高い。単なる断層に過ぎないのではないでしょうか」

 さらに山崎教授は注意を促す。今回見つかった首都圏の新断層が、たとえ活断層だとしても、過剰に恐れる必要はないというのだ。

「地震を引き起こす活断層と、地震の揺れが起きる場所は必ずしも一致しません。活断層のズレが揺れとなって広がり、地盤の弱い場所などでより大きな被害が出ます。活断層上だけが木っ端みじんになるわけではありません」

 活断層が引き起こした地震として知られるのは、6434人が死亡した95年の阪神・淡路大震災だ。兵庫県の淡路島北部にある「野島断層」が引き起こした内陸直下型地震だが、被害が激甚だったのは淡路島北部から離れた、神戸市須磨区から兵庫県西宮市にかけての地域だった。

 また朝日新聞の調査によると、阪神・淡路大震災後の17年間で、活断層が起こした可能性のあるM6以上の主な地震は14回あったが、いずれも国が警戒を促していた約100の主要な活断層帯以外で起きていた。

 こうしたことから、今回のように特定の断層について危険性を喧伝することは、「むしろ有害」という指摘もある。現在の日本の地震学に批判的な島村英紀・武蔵野学院大学特任教授(地震学)も、こう強調する。

「日本国中、どこも同程度に地震、激震が襲う可能性はあります。だから、特定の箇所や地域の危険性ばかり指摘することは、他の地域について安全だと言っているのに等しくなる。これまでも、危険だとの指摘が乏しかった地域で警戒感が緩み、地震が起きると被害が拡大してきたという側面を否定できません」

AERA 2012年9月24日号