ついに国政に乗り出した橋下「維新の会」。嵐のような追い風を受けるが、足元には「爆弾」も。維新を果たせず、野望の半ばに悲壮な最期を遂げる新撰組になるかもしれない。

 いまや世論調査によっては政党支持率でトップにさえなる維新だが、不安要因はその足元にある。

 橋下氏が「右腕」と信頼する松井一郎大阪府知事(48)だ。黒縁の眼鏡をかけることもあり、どこか大阪で絶大な影響力を誇るミュージシャンのやしきたかじんを思わせる。国会議員との連携など、維新の国政進出などの戦略面を一手に任されている。

 橋下氏との関係について、維新の会の関係者はこう語る。

「橋下さんは政界に入るきっかけを作ってくれ、その後も支えてくれた松井さんに恩義を感じている。松井さんの判断は尊重するし、敬語で話してますよ」

 今年6月、大阪都構想関連法案の成立見通しが立ち、橋下氏が一時、「大義がなければ基本的に必要ない」と国政進出に消極的な発言をしたときも、松井氏は「政治闘争をする大義は十分ある」と発言し、橋下氏を鼓舞した。

「政治屋としては天下一品。行動力や政治的嗅覚は、ず抜けている」(自民党府連関係者)という評価の一方で、その政策の理解力には疑問符がつく。大阪府・市の再編に向けた「大都市制度推進協議会」で自民党の府議や市議から具体論を突っ込まれると、答えに窮して、橋下氏があわててフォローに回るシーンがたびたびあった。

 維新の会の内情をよく知る関係者はこんな懸念を漏らす。

「維新にとって、いまや松井氏が一番のリスク要因だ。府議経験しかないのに、注目されて舞い上がってしまった。彼が中心で動くほど、維新は階段を踏み外していく」

AERA 2012年9月24日号