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近年、「ウェルビーイング」という言葉をさまざまなところで耳にしませんか? 「ウェルビーイング」とは、肉体的・精神的・社会的によい状態のこと。なかでも今、「子どものウェルビーイング」に注目が集まっているといいます。子どものウェルビーイングのために、大人たちが、社会ができることはなにか? 親たちの悩み、それに対する専門家の意見を求め、オンラインフォーラム「子どものウェルビーイングを意識できる社会へ~子どもたちと向き合う、私たちにできることとは?~」を取材しました。
左からフォーラムに登壇した平岩国泰さん、岡田晴奈さん、石川善樹さん、ファシリテーターを務めた庄子寛之さん
文/安楽由紀子 デザイン/スープアップデザインズ
制作/朝日新聞出版メディアプロデュース部ブランドスタジオ 企画/AERA with Kids Plus AD セクション
石川 善樹さん
公益財団法人Well-being for Planet Earth代表理事
東京大学医学部健康科学科卒業後、ハーバード公衆衛生大学院修了、自治医科大学で博士(医学) 取得。専門分野は予防医学、行動科学、計算創造学、概念進化論など。「人がよく生きる(Good Life)とは何か」をテーマとして研究。
急激に変化していく社会で、不確かな未来に向かって歩む子どもたち。社会は安心できるところであり、未来には幸せが待っていると示すことは、今の大人たちの役割と言えるでしょう。ところが、日本の「子どもの幸福度」は、39カ国のうち13位と言われています(ユニセフ・イノチェンティ研究所のレポートカード17から)。日本の子どもは健康であっても、精神的幸福感や自己肯定感が比較的低いとされているのです。
今回のフォーラムを主催するベネッセは、これまでも赤ちゃんから高齢者までのウェルビーイングを支援し続けてきた企業です。ベネッセはラテン語の「bene(よく)」と「esse(生きる)」を組み合わせた造語で、英語では「Well-being(ウェルビーイング)」。ベネッセという不変の企業哲学であり社名を掲げ、30年以上前から、教育・生活、そして介護の事業を通してさまざまな世代の「よく生きる」を追求する中、2022年には「ベネッセ ウェルビーイングLab」を立ち上げています。フォーラムはその活動を元に、小学生に接する保護者、教育関係者、地域などで子どもと接する人々に対し、「子どもへの向き合い方やウェルビーイングを考える機会」として、研究者・企業・NPOというさまざまな視点からの話が紹介されました。
第1部ではまず、ウェルビーイング研究の第一人者である石川善樹さん(公益財団法人Well-being for Planet Earth代表理事)が、ウェルビーイングについて解説しました。
石川さん ウェルビーイングには、教育を受けることができ、健康で・資産が満たされているような状態を示す客観的ウェルビーイングと、各人の生活満足度を指す主観的ウェルビーイングがあります。従来は、客観的ウェルビーイングが重視されてきましたが、日本はオイルショックやバブル崩壊を経て21世紀に入ってからというもの、今後、家庭の生活が「よくなる」と思っている人の割合が下がり、低迷を続けています。 経済的にはまだ豊かで、平均寿命も長い国であるにもかかわらず主観的ウェルビーイングが低いことは大きな問題です。そのような背景の中で、生活満足度を高めていく=主観的ウェルビーイングを重視する動きが出ているのです。
そうした動きが子どものウェルビーイングにも影響してきたのが今です。では、子どもたちの主観的ウェルビーイングを形作るためには何が必要なのか。そのキーワードの一つが「居場所」です。居場所とは「家、学校、習い事、あるいはSNSなどのようなデジタル空間も含めて、自分らしくいられる場所」のこと。そして、そうした居場所があるほどに子どもたちの「今の充実感」「自己肯定感」や「チャレンジ精神」、あるいは「社会貢献意欲」などが高まるということがわかってきました。
興味深いのは、自分らしくあるための居場所が大切でありながらも、「あまりにも居心地のいい場所をつくらないことも大事」という点。
石川さん あまりにも心地いい場所があると、そこに執着してしまい、他の場所では居心地の悪さを感じてしまうことがあるからです。いろいろな居場所を作ってあげることが、短期的にも長期的にも子どものウェルビーイングへとつながります。
ほかにも、ジェンダーや放課後の体験格差、育児に翻弄されてストレスを抱える乳幼児のお母さんなど、子どもを取り巻くさまざまな課題が顕在化する中で、子どもたちのウェルビーイングをどのように支えていくか。今後、社会にとって大きなテーマであることも伝えられました。
岡田 晴奈さん
ベネッセホールディングス
常務執行役員 兼 ベネッセ ウェルビーイングLab所⻑
ベネッセ入社後、2児の母としての経験も生かし「こどもちゃれんじ」などを統括。 2022年にはESG・サステナビリティ推進本部長に就任し、社会に向けて「よく生きる(ウェルビーイング)」を発信。
続いての登壇は、岡田晴奈さん(ベネッセホールディングス常務執行役員 兼 ベネッセ ウェルビーイングLab所長)。ベネッセ ウェルビーイングLabの活動を元に得られた気づきや知見が紹介されました。
岡田さん ベネッセ ウェルビーイングLab(以下、ラボ)では多様性と対話を重視しながら、専門家や企業・NPOなどさまざまな方に参画をいただきながら活動をしてきました。その中で「子どものウェルビーイング」を一つのテーマとして考えるため、昨年12月にはワークショップを開催。実際に子育て中の親御さんたちにさまざまなウェルビーイングの知見を提示しながら、どのような反応や意見があるかを見ていきました。その結果、参加した方たちからは「子どもが『したい』ことよりも『させちゃう』ことの方が多い」「大人が子どもの幸せを勝手に定義していないか」「子どもの声を本当に聞けているのか」など、さまざまな声が上がりました。幸福度が高いオランダや北欧では、幼いころから考える癖をつけることが重要視され、子どもの自己決定が尊重されているといいます。自分自身の反省も含めて、子どもの考える機会を奪っていないだろうか?と考えさせられました。
子どものウェルビーイングについて話すうちに、「親のウェルビーイングはどうなんだろう?」と、考え始める姿が見られたことは非常に示唆に富んでいたといいます。
岡田さん 子どものウェルビーイングを考えることは、子どもを取り巻く大人、とりわけ親御さんや家族のウェルビーイングを考えることにもつながります。そして、家庭だけではなく学校や塾の先生、地域の人々といった人とのつながりもまた重要な要素。周りの大人たちが子どもを信じて見守る時間や空間の中で育つ“その子らしさ”を大切にする世界が広がればと思います。
日々せわしない毎日の中で考えることがあまりない「子どものウェルビーイング」について、対話し深める機会からさまざまな気づきが生まれたことが窺われました。
子どもと信頼関係を結べる大人の存在が重要
平岩 国泰さん
特定非営利活動法人
放課後NPOアフタースクール 代表理事
1996年に株式会社丸井入社。⻑女の誕生をきっかけに、放課後NPOアフタースクールを開始し21校のアフタースクール開校に携わる。2017年から渋谷区教育委員。19年新渡戸文化学園理事⻑就任。
最後は、子どものウェルビーイングのために、放課後の居場所作りの活動を実践する平岩国泰さん(放課後NPOアフタースクール代表理事)から、子どもの居場所を考える上での四つのキーワードが伝えられました。それが、あなた自身が素晴らしい存在だと伝え「ありのまま」でいられること、自分で選んで決める「自己決定」ができること、誰かに貢献することで自分が好きになるという「人への貢献」、そしてその子を信頼し共に歩む「伴走者」がそこにいることです。
「伴走者」のエピソードとして、学校でうまくいかなかった子がアフタースクールで料理のプログラムに参加するうち、学校とは違う料理の市民先生からかけられた信頼の言葉が自信となって変わることができた話や、そこから母親も誰かと比べるのではなくその子の良い面に注目する大切さに気付くことができたなど、実際の放課後の居場所で起こった出来事なども共有されました。
平岩さん こうしたたくさんのエピソードからも、「居場所」は単なる場所だけではなく、人とのつながりでもあり、これら四つのキーワードを大切にしながら、いかにしてその「質」を高めていくかが大切だと思います。そしてそれは放課後だけではなく、学校・家庭にも当てはまることではないでしょうか。
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第2部では、元小学校教諭という経験をもつベネッセ教育総合研究所の庄子寛之さんをファシリテーターに、石川さん、岡田さん、平岩さんによるパネルディスカッションが行われました。
庄子さん 子どもの自己肯定感を伸ばすために、親が気を付けることはなんでしょうか。
平岩さん 子どもはみな親に喜んでほしい、いいところを見てもらいたいと思っています。その中で、誰かと比べるのではなくその子自身を見てあげること。もし比べるのであれば、少し前のその子自身と比べて「斜め後ろから見守る」ぐらいの気持ちで、まずは子どもの居場所を家庭にしっかり作ってあげることだと思います。
岡田さん お子さんの発達段階にもよりますし、一人ひとりの気質も違うことを前提に、家庭ではその子らしさを受け止めること。そして評価しないことではないでしょうか。外ではいろんな意味で比較・評価されるからこそ、家庭では「あなたがいてよかった」ということを心から伝えてあげることが大切なのではと思います。
石川さん 非常に難しい、それは子どもと親は違う人間だからです。何が喜びなのか、親とは違う可能性もあります。親自身と子どものタイプが違う、という場合には家庭に閉じこめずに、子どもと似たタイプの第三者に委託して自己肯定感を伸ばす、という方法があってもいいのだと思います。
庄子さん 親や大人のウェルビーイングを高めるにはどうしたらいいでしょうか。
石川さん 大人も子どもと一緒で、ウェルビーイングのためにはいろんな居場所があること、そして「健全な多重人格」であることですかね。例えば教員の場合、学校の外でも24時間いつでも“先生”であることを求められると苦しいですよね。何者かである自分とそうでない自分。いろんなバリエーションある自分でいられることが大事でしょう。
岡田さん 子どもと大人の違いは時間軸。全ての大人は子ども時代を通過してきて、その体験をベースに人生を歩んでいます。その中で「これが好きだな」と思ったことを自分なりに大切にする。そして、子どもが夢中で取り組んでいることにも目を向けながら、お互いにそういう瞬間を大切にしてもらえればと思います。
会の最後にはそれぞれから、ウェルビーイングのためのメッセージが送られました。
平岩さん 子どもについて悩んだり迷ったりすることは多いけれども、大人が幸せそうな顔をしていると子どももいい顔になっていくので、まずは大人のウェルビーイングを大切に。そして、何をしたら楽しいか、幸せか。子どもに聞いてみるといいですね。
岡田さん 子どもも大人も、ウェルビーイングや幸せを今より少し意識してみること。そして、周りの人たちの笑顔を増やすことを心がけてみること。それが結果として自分にとっての心地よさとなり、これからのウェルビーイングへとつながるように思います。
石川さん 今日のテーマである主観的ウェルビーイングの時代となって、正直ますます混沌(こんとん)としている感じを受けています。ただ、その中で言えることは、人は主観で見ると実に多様なんだ、ということです。自分がよかれと思ったことが、他の人からはストレスになることもあります。何が喜びで何が苦しみか、人それぞれの違いを私たちが一つひとつ理解し、学ぶほかありません。子どももそうで、ゲーム一つとってもどのように取り組むかはさまざまです。表面で判断するのではなく、この子はどうものごとに取り組み、どう感情が動いているか。まずは観察することがウェルビーイングの始まりではないかと考えています。
視聴者からの質問も受け付けながら行われたパネルディスカッション。司会の庄子さんは「未来を考えるとわからないことだらけでつい不安になりますが、今を楽しみながら、幸せやウェルビーイングをとらえられるとよいですね」と話し、フォーラムが終了しました
フォーラムに参加した視聴者からは、次のような声が寄せられました。
▶親からの押し付けではなく、子どもの立場に立って、その子にとっての幸せとは何か? 考え直すきっかけとなりました。
▶親自身のウェルビーイングにも目を向けることが大切だと気付けました。子どもと共に親も幸せを追求できたら最高だと思います。
▶一人ひとり異なる存在であることを知るためには対話が大切、そう学びました。
▶私と子どものタイプは違う。お互いの違いを認めながら、家が安心できる居場所であるようにしたいです。
今回のフォーラムでは、「居場所」や「自己決定」「大人自身のウェルビーイング」など、子どものウェルビーイングを考える上でキーワードとなるヒントがいくつも見受けられました。ベネッセ ウェルビーイングLabは、今後も子どものウェルビーイングをテーマとした活動を続けていくといいます。
多様性が重視される時代、ウェルビーイングもただ一つの正解があるわけではありません。親世代とは違う未来を進む子どもたちがよりよく生きるために必要なことは? 親や教育関係者だけではなく、社会全体で考えていくべきテーマでしょう。昨今は、子どもの進路や受験などにおいても偏差値という従来の価値観による物差しだけでなく、子ども一人ひとりの特性に合う環境を探す保護者も増えています。今後も、子どもや家族のウェルビーイングにとって大切なことは何かを多様な視点から、一緒に考え続けていければと思います。
提供:ベネッセ ウェルビーイングLab