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友達ができない大学生

「満足度」上げた仕組みとは?

世界中で大流行した新型コロナウイルス感染症は、大学生の生活も一変させた。入学式は中止され、授業もない。何よりも同級生たちと知り合うことができず、2020年に入学した現3年生の大学への満足度は低いことが全国大学生活協同組合連合会などの調査でわかっている。しかし、取材を進めていくと、今回対象にした流通経済大学の学生は、その傾向を良い意味で裏切ることとなった。コロナ禍の大学生を支えたものとは何だったのか。パンデミックによる遮断はSNSの隆盛とともに生まれた私たちZ世代が求める「友達像」の変化も浮き彫りにした。

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コロナ禍のリモート授業期間中、大学内で友達ができた学生は少数派だった(※画像はイメージです。撮影/流通経済大学チーム)

「みんなとワイワイしている大学のイメージと違う……」

新型コロナウイルス感染症が蔓延し、緊急事態宣言が発出されていた2020年。当時1年生だった流通経済大学社会学部3年生の沼田悠希さんは、パソコン上でのみの授業を受ける大学生活に、そう感じていた。入学前にオープンキャンパスで感じた学生同士で交流する楽しげなイメージとはかけ離れていた。

大学受験を乗り越え、ようやく憧れのキャンパスライフが始まると期待していた。しかし、入学式は行われず、授業はZoomなどのオンライン会議サービスを利用したもの。キャンパスへ通うこともなく、友人と過ごすことはおろか、その友人を作る機会もない。大学生としての実感を得られなかった。1年前と自分のステージは変わったはずなのに、「心の中は“高校4年生”のようだった」と、別の学生は言った。

人間関係の構築が非常に難しい環境は、大学生にどのような影響を与えたのか。私たち、流通経済大学チームは当時の大学生活の実態を調べるため、2022年9月、同大学の学生5511人を対象にインターネット上でアンケート調査を実施した。回答を得られたのは31人。

その結果、最もショッキングだったのが、リモート授業期間中(2020年度~2021年度)に友達ができなかったと回答した人が73.3%を占め、7割を超えたことだった。逆に「できた」と回答した人は26.7%という結果となったのである。つまり、コロナ禍で友人関係を構築できたという大学生は少数派であり、大半は新たな交友関係が作れなかったということが明らかとなったのである。

こうしたコロナ禍による交友関係の悪化が影響を与えたのか、全国大学生活協同組合連合会による学生アンケート(2021年7月実施、7832人が回答)からは大学そのものに対する満足度の低さを浮き彫りにしていた。入学直後にコロナ禍の影響を受けた現在の大学3年生は、他の学年と比べて「学生生活が充実している」と回答した人の割合が最も低くなっているのだという。さらに、同調査では友人関係の充実度や入学後にできた友人の数においても、3年生が他学年と比べて低い傾向があった。つまり、友人関係の充実は大学生活の満足度と関連していることがわかる。

「満足度」上げたゼミの工夫
授業前後の時間をZoomで再現

しかし今回、生の声を知るために流通経済大学に通う学生にインタビュー調査を実施したところ、意外な結果が得られた。その一つが、インタビューに協力してくれた人のほとんどが「今の大学生活には満足している」と回答したことである。その理由の多くは、現在、リモート授業期間中と違って通常通り対面授業が復活しているため、共に学生生活を送る友人もいて、充実しているからというものだった。友人が1人もできず大学への満足度も低かったころと比較して、今現在は満足できているということなのかもしれないが、同時期に友人ができたと答えた人の中には「ゼミ」をきっかけに挙げた人が少なくなかった。多くの大学で3年生から始まる少人数制のゼミが、流通経済大学は1年生から取り入れられているということもあり、他大学と比べてコロナ禍でも同学年の学生同士で交流する機会が多く、友人を作りやすい環境であったことも満足度の高さに影響している可能性がある。

同大学社会学部3年生の日山秀斗さんは、緊急事態宣言発出期間中にZoomで受けたゼミの授業で、学生同士で自由に話す機会を指導教員が設けてくれたおかげで友人を作ることができたと話す。

日山さんによれば、Zoomにて自由に学生同士で雑談を交わし、その中で仲良くなれた人同士がLINEのアカウントを交換することで、授業の時間外でも連絡を取り合うというような、本来大学で築ける友人関係を構築できたというのである。日山さんの所属していたゼミでは、授業中のディスカッション以外にも交流の機会があったために友人関係を築くことができ、当時多くの大学生が抱えていた孤独感も感じることなく過ごせたという。

このゼミを担当していた同大学の高口央教授(心理学)は、「学生が友人を作りづらいというのはわかっていたので、友人作りは大事なテーマとして意識的にサポートしてきた」と振り返る。

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今年度から多くの大学で対面の授業が再開され、にぎやかなキャンパスが戻りつつある(※画像はイメージです。撮影/及川慶典)

高口教授がZoom上で再現しようとしたのは、コロナ禍前の大学キャンパスに必ずあったはずの余白の時間だ。オンライン授業では教員がZoomの部屋を作り、学生は一斉にそこに入るという形になるため、教員の目が常にあることになり、学生同士で自由に話ができない。本来の授業であれば、交流関係を広げるきっかけになっていたはずの授業前後の時間を再現するため、類似性や熟知性といった心理学の知見も基に、学生同士で話せる機会を設けたのだという。

「新しい環境で4年間過ごすのなら最初に出会った人たちとつながるのは重要。それはオンラインでも、そうでなくとも変わらない」

同教授は1年生時の友人関係の必要性を、そう説いた。

寂しくても「誰でもいいわけじゃない」

一方で、大多数の「友人ができなかった」学生たちは何もしなかったのかというとそうではない。

「趣味が合う人とTwitterで交流」(同大学3年日山秀斗さん)、「#春から流通経済大学というハッシュタグで同級生を探した」(同大学3年阿部彬将さん)など、リアルでは面識のない人ともSNSを通じて会話を楽しむ人もインタビューでは多数聞かれた。

「下手に学校内で作るよりも、SNSは自分と合う人を見つけやすい」(アンケート調査の自由記述より)という声もあり、人間関係を大学ではなくSNSに重きを置く学生も出てきたことがわかる。実際に、インタビューに回答した学生のほとんどが同じ趣味の人と交流するためのSNSアカウントを保持していると回答。趣味の関係はSNSで満たすようになっていることがわかる。

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コロナ禍でSNSの使い方に変化も。ある学生は「匿名のTwitterより、顔が見えるInstagramを使うようになった」と語った(※画像はイメージです。撮影/流通経済大学チーム)

かつて大学生といえば、新入生歓迎会やコンパ、サークル活動などを通して多くの人と知り合い、友人を作っていくのが定番だったが、SNS誕生とともに生まれたデジタルネイティブ世代はコロナ禍を経て、大学では「趣味の合う友人」ではなく、「同じ大学に通う仲間」を求めるようになったのかもしれない。

その「仲間」の不在が問題となっているのではないだろうか。

「誰でもいいから会いたいじゃなくて、この人だから会いたいと思った」

同大学3年菊池和真さんは、オンライン授業期間中に寂しさを感じたときのことを、こう語った。今、大学生が求めているのはリアルを共有する「仲間」なのだ。それはSNSの「友達」や「フォロワー」では埋められるものではない。

コロナ禍で学生同士が出会うチャンスは減った。だが、その環境に適応し、少数の「仲間」を求めるという、友達像の変化を浮き彫りにしたといえるのかもしれない。そのわずかな条件を満たすことができれば、私たち大学生の日々はさらに充実したものになるはずだ。

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(文/流通経済大学チーム)