約6500人の学生が学ぶ千葉商科大学の市川キャンパス(千葉県市川市)。そこで消費するエネルギー量と、再生可能エネルギーによる発電量を同じにする。千葉商科大学はいま、日本の大学としては初となる「自然エネルギー100%大学」に挑戦している。2019年1月にはキャンパスの消費電力量と発電量を同量にする第1期の目標を達成。23年度までにガスも含めたすべての消費エネルギー量に相当する発電量を目指している。
原科幸彦学長がその目的についてこう話す。
「本学を再生可能エネルギー導入の拠点にしたいと考えました」
東日本大震災以後、再生可能エネルギーへの期待が高まるなか、13年、千葉県野田市の大学所有地に、大学単体としては日本最大規模のメガソーラー野田発電所を建設。14年から電力会社へ売電する太陽光発電事業を開始した。
持続可能な社会の実現を目指す原科学長は13年、学内の意識啓発のために公開講座を開始し、14年には自然エネルギー100%大学を目指すとした。当時の自然エネルギー率を政策情報学部の鮎川ゆりか教授(現・名誉教授)のゼミナール等で調べたところ、野田発電所の発電量と1号館屋上の太陽光パネルの発電量の合計で約60%と出た。残り40%への挑戦が始まった。
千葉商科大学 学長
原科 幸彦
1946年生まれ。東京工業大学理工学部卒業、同大大学院理工学研究科博士課程修了。東京工業大学工学部助教授・教授、大学院総合理工学研究科長などを経て同大名誉教授。2012年に千葉商科大学に着任。政策情報学部長を経て、2017年3月より現職。専門は社会工学で、参加と合意形成研究、環境アセスメントの第一人者として国内外で広く知られる。
まず、太陽光パネルの増設といった「創エネ」と共に「省エネ」を推進することで100%を達成することとし、ハード、ソフトの整備計画を提案。また、鮎川ゼミの学生が学内のエネルギーの無駄を徹底的に調査し、他の学生は学内に設置する自動販売機の削減や省エネ型への切り替えをベンダーに提案するなど、大学と連携し省エネを進めた。
そして17年3月、原科学長が打ち出した4つの「学長プロジェクト」の一つとして、自然エネルギー100%大学に向けた全学的な取り組みが始まった。
「本学がその実績を示すことができれば、社会を変える力になると考えました」(原科学長)
いまでは、野田発電所の売電分を買い戻すなどして、市川キャンパスで購入する電力はすべて再生可能エネルギー由来のものに切り替えている。17年12月には地球温暖化対策に取り組む環境省の「COOL CHOICE LEADERS AWARD」の優秀賞を、20年1月には「19年度省エネ大賞」審査委員会特別賞、他にも国際的な賞なども受賞し、この取り組みは社会からも高く評価された。