
東京学芸大学附属世田谷小学校
沼田晶弘先生
東京学芸大学教育学部を卒業後、アメリカ・インディアナ州立ボールステイト大学大学院で学び、同州マンシー市名誉市民賞を受賞。2006年から東京学芸大学附属世田谷小学校で教鞭を執る。ユニークな授業が注目され、日本テレビ「news zero」、フジテレビ「ノンストップ!」などに出演。学校図書生活科教科書の著者で、『ぬまっち流 自分で伸びる小学生の育て方』(KADOKAWA)など著書多数。
旅行ガイドに載ってない魅力を探そう!
「勝手に観光大使」では、選んだ都道府県を調査してその魅力を発表し、最終的に知事に手紙でプレゼンテーションをする。発案者のぬまっちにポイントを聞いた。
「勝手に、ではあるけど『観光大使』を名乗るからには、旅行ガイドそのままみたいな内容じゃダメで、他県の人が驚くし、地元の人もあらためて気づくような情報を見つけるのがコツ。栃木県ではギョーザを酢とこしょうで食べるとか、長野県には日本でいちばん小林さんが多いとか、おっ!と思うことを入り口にすると、聞く人の心をつかみやすくなるんだ」
発表資料を作って、いろいろな人に聞いてもらう
自治体の魅力を集められたら、プレゼンテーションソフトのパワーポイントを使って資料にまとめる。重要なのはいろいろな人の前で発表してみることだ。ぬまっちクラスでは、クラスのみんなやその家族を集めて発表する。すると、自分ではちゃんと資料をまとめたと思っていてもわかりづらいと言われたり、自分でも説明しにくい部分があったりなど、修正点が見えてくるという。
「伝わりにくいところがわかったら、そこを直してまた別の人に聞いてもらう。何度も繰り返して大勢の意見を採り入れ、修正することで資料が良いものになっていく。自分が送った資料と手紙で、都道府県知事が驚くと思うとワクワクするよね」(ぬまっち)
君も「勝手に観光大使」にチャレンジしてみよう!

ぬまっちクラスのみんなはどんなふうに情報を集めているのか、「勝手に観光大使」の時間をのぞいてみよう。
教室には3台のタブレットがあって、気になること、調べたいことがあったら、すぐに調べることができる。ただ、インターネット上の情報は膨大だ。必要な情報を選び出すコツを聞いた。
「古い情報はあまり使えないので、検索画面の下のほうにあるページは開きません。画面の上のほうに出てきた情報を見ますが、念のため更新日時も確認しています」
「はじめは観光課などの公式サイトを見ます。情報が正確だから。でも、そういう情報だけだとガイドブックと同じになってしまうので、それ以外のサイトも探します」

このときに気をつけることを聞いたところ、「ひとつのサイトの情報だけだと間違っていることもあるので、必ず他のサイトも調べます。3つくらいのサイトで同じことが書いてあったら、その情報を信用して使うようにしています」とのこと。インターネットにはたくさんの情報が掲載されている半面、誤った情報も多いので、どの情報が正しいかを見抜くことも重要になってくる。面白そうな話題が出てきたら、それをキーワードにして、さらに広く深く検索していく。
「よく検索するのは『●●県あるある』とか『●●県 全国1位』とか。その県の特徴がわかります。あとは、東京に住んでいる自分の目線で、面白いと感じるものを探すんです」
インターネットの中から正確で面白い情報をうまく探し出すには、「検索のしかた」が重要なんだね。

ぬまっちクラスでは、1人がひとつの都道府県を担当する。行ったことがなくても、しっかり調べれば地元の人より詳しくなれる!?

クラスでは、NECのタブレットが使われている。タブレットであれば、文字や写真を簡単に拡大したり、動画の情報を見たりすることができるのも、書籍と比べて便利な点だ

ぬまっちからひと言
インターネットの検索はキーワードが大事だから、辞書を引く習慣があると、使える言葉が増えて大きなアドバンテージになる。僕は毎朝、ニュースをクラスで解説するんだけど、みんな、興味を持った言葉はすぐにタブレットで調べる。気になったことを調べていくうちに、検索のしかたが上手になっていくよ。

パワーポイントは、パソコンの大きな画面で全体を確認しながら修正していく。全体の構成、見やすさを考えた会心の出来栄えだ
プレゼンテーションでは資料がとても重要になる。パワーポイントの資料は、画面の大きいパソコンだと作業しやすい。ときどきぬまっちから「ここを大きくしたら、もっとインパクトがあるんじゃない?」などのアドバイスも入る。写真の入れ替えをスイスイ操作している人に話を聞いた。
「私が担当する大阪府にある四天王寺って、甲子園球場の3倍の広さなんです。それをわかりやすくするために、四天王寺境内の地図の隣に、甲子園球場の写真を3枚、並べてみました」
なるほど! たしかにひと目でわかる。ぬまっちは工夫が大切な理由をこう話す。
「話す人が目の前にいるプレゼンテーションなら、反応を見ながら言い直したり、補足したりできる。でも知事には資料と手紙だけでプレゼンテーションをするから、内容がパッと見てすぐわかるように工夫しないと、理解してもらえないかもしれない。本当は、話すより書くほうが難しい。だから何人かに資料を見てもらって、文字の色を変えたり、写真を大きくするなどの工夫が必要だ」
「勝手に観光大使」の最終目的は知事をうならせること。知事はその自治体を一番知っている人だから、クラスメートや親よりも格段に手ごわい。資料や文章を何度も人に見てもらって、誰もが納得する魅力的な資料を完成させよう。


プレゼンテーションのあとは、「うまくいったこと」や「うまくいかなかったこと」を書き出すと、どのように資料や話し方などを変更すべきか考える材料になる

ぬまっちからひと言
これまでに何度も「勝手に観光大使」をやっているけど、何人もの知事から返事があったよ。「勝手に観光大使」じゃなくて、本物の観光大使に任命されたこともあるし、ゆるキャラと一緒に知事が教室に来たこともあった。君も好きなこと、気になることを調べて、周りの人にプレゼンテーションしてみよう。
タブレットやパソコンを使っていると、
いろいろ疑問や悩みがでてくる。
ぬまっちに解決策を聞いてみよう。

ぬまっちクラスでは、タイピングのゲームが休み時間のブーム。難読漢字の読み仮名を入力するアプリでは全問正解する強者が続出している
Q1パソコンが苦手で資料を作るのに時間がかかる
A1 まだパソコンに慣れていなくて、キーボードの入力に時間がかかっているのでは? 無料で使えるタイピング練習アプリがあるから、試してみたらどうだろう。時間内にどれだけ文字が打てるかを競うゲームなどがおすすめ。遊び感覚でやっているうちに、自然と速く文字が打てるようになる。そうすれば、検索や資料作成のスピードがアップする。
Q2間違ったキーやボタンを押したら壊れない?
A2 昔のパソコンは動かなくなることがよくあったけど、最近のパソコンはちょっとやそっとでは壊れない。でも、もし誤った操作をしてしまったらどうするか。
①パソコンから手を離す
②深呼吸をする
③「戻る」ボタンをクリックする
この3ステップでたいていは大丈夫。怖がらず、どんどんパソコンに触れてほしい。
Q3ゲームや動画をやりすぎないよう、親に言われる
A3 日本のゲームって、世界に誇るトップクリエーターたちが本気で作っているから、面白くて当たり前。インターネットにも面白い動画がたくさんあって、一度見始めたら途中でやめるのは難しい。だから、宿題みたいに絶対やるべきことは先に済ませておこう。「やり過ぎ」でタブレットやパソコンを取り上げられたら、そっちのほうが損だと思わない?
手軽に持ち運べて便利なタブレット、大きな画面で複雑な作業に向いているパソコン。普段の勉強にも自由研究にも活躍するのがデジタルツールだ。NECのパソコンとタブレットには最初からワード、エクセル、パワーポイントが入っているのですぐに使える。
タブレットのここがいい!
自分の知りたいことは、自分の力で答えを探したい。タブレットならすぐに調べることができる。また、軽くて丈夫なので、どこにでも持ち出せる。気に入ったものを写真に撮ったり、それを図鑑で調べたり、友達に見せたりして楽しめる。

見やすい大画面のスタンダードタブレット
TE410/JAW 10.1型ワイド LED IPS液晶(1920×1200ドット)
バッテリー約11時間 約480g
パソコンのここがいい!
いくつもサイトを開いて調べものをするときも、それをパワーポイントでまとめるときも、大きな画面だと見やすい。用途に合わせて、タブレットと使い分けよう。

大画面、高音質のハイスペックモデル HA970/RAW 27型ワイド LED IPS液晶(フルHD)
タブレットとパソコンを
合体したモデルも!
教科書と同じぐらいの大きさで、ノートパソコンとして使えるだけでなく、キーボードを取り外してタブレットのようにも使える。

FM150/PAL 10.1型ワイド LED IPS液晶(1920✕1200ドット)
※タッチ・ペン入力対応

楽しむことで子どもは伸びる!
ぬまっち流・デジタルツールの上手な「使わせ方」
「たとえば『勝手に観光大使』は、ひと言で言えば『調べ学習』なんだけど、正面から『●●について調べよう』と言っても、子どもたちは興味を持ちづらいし、やる気を維持し続けるのは難しい。そこで僕が編み出した作戦が『アナザーゴール』です。目の前にクリアしやすい小さなゴールを出し、それがクリアされたら少し先にまた別の小さなゴールを出す。これを繰り返しているうちに、いつのまにか大きな最終ゴールにたどり着いているというわけ」
「勝手に観光大使」なら、初めて使うパワーポイントでかっこいい資料を作れることが興味を引くきっかけになり、「地元の人も気づいていない情報を探す」という条件を与えることで、インターネットの中から自分の欲しい情報や正しい情報を入手するスキルの習得を促す。都道府県知事に送る手紙を作る過程にも小さなゴールがある。いろいろな人の前でプレゼンテーションを繰り返すことで、相手に興味を持って理解してもらうには、どんなふうに話し、資料を作ればいいのか、意識・工夫する習慣が身についていくのだ。
デジタルネイティブ世代の
特性と可能性を伸ばす
ぬまっちクラスでは、子どもの学習意欲を促す道具として、タブレットとパソコンをうまく用いていた。「いつでも使える環境にあることが大切。気になることは興味があるうちにすぐに検索できるし、強く関心を持ったことは幅広く、徹底的に調べることで、子どもの好奇心は深まっていくんです」とぬまっちは言う。パソコンは、情報をまとめる作業に適した道具だ。インプットした情報を知識としてアウトプットする一連の流れをサポートしてくれる。自分のプレゼンテーションでみんなや知事を驚かせたという「成功体験」は、子どもの自信になる。
子どもにインターネットやデジタルツールを使わせる際には不安が伴うが、ぬまっちクラスでは使用上の注意点と「マナー」を教えて、あとは子どもたちの判断に任せているという。「現実社会でもインターネット上でも気を付けることは同じ。怪しい人には近づかない、危ないところには行かない、自由に使うためには『マナー』を守らなくてはいけない、ということを子どもたちに伝えています。こういったことを言われて理解できるようなら、ある程度自由に使わせてもいいでしょう」(ぬまっち)
積極的に活用すれば、学習に役立つだけでなく、デジタルスキルも身につけられる。子どもとコミュニケーションを取りながら、どんな使い方がいいのか話し合ってみてほしい。

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