ギグワーカーが集まる
リアルの場所や機会を提供

「働く」はもっと自由でいい

アメリカではネットを介し、単発の案件を個人で請け負う働き方を「ギグ」と呼ぶ。働く時間を選べるため、副業に活用する人も多い。ギグワークス株式会社は、日本でその仕組みを確立した先駆者的な存在だ。多様な働き方を支え続けてきた企業は、これからの日本社会でどのような役割を担っていくのだろうか。

文/武田 洋子 撮影/スケガワ ケンイチ 企画・制作/AERA dot.AD セクション

新技術登場の舞台裏で
インフラ整備をサポート

AERAの裏表紙に村田社長が登場しました!

片桐 社名を「スリープログループ」から「ギグワークス」に変更されましたが、その背景をお聞かせください。

村田 私たちは1996年の創業以来、さまざまな業務を、案件ごとに個人事業主に委託しています。しかしそうした事業が旧社名からはわかりにくく、数年来、変更を考えていました。それが最近、アメリカでこうした働き方を「ギグ」もしくは「ギグエコノミー」と呼ぶと知り、まさに私たちのビジネスモデルを表す言葉だと思い、社名にしたのです。

片桐 「ギグ」というとジャズセッションやライブのイメージです。

村田 もともとは音楽用語ですね。働き方を単発ライブに見立てたのでしょう。

片桐 創業のきっかけはどのような?

村田 「Windows 95」が一般家庭に普及した頃、創業者が家庭教師のアルバイト先で使い方を教えたところ、非常に感謝されたと。これは事業になる、と起業したと聞いています。

片桐 そこから一気に事業を拡大されて。

村田 個人宅のインターネット接続を、自社スタッフではなく個人事業主に委託することで、全国のニーズに対応できました。2001年のブロードバンド元年には、ADSLモデムを家庭に接続・設定する業務で業績を伸ばし、03年にマザーズ上場(現在は二部上場)を果たしています。その後はWi-Fiアンテナを日本中の飲食店に営業・設置したり、新製品のテクニカルサポーターとして企業の依頼を受けたり、ネットワークの保守を行ったりと、業務内容が広がっていきました。

片桐 ITの普及に伴って、必要なインフラ整備の役割を担われているのですね。

村田 ロボットやAI、IoTなど、新しい技術が世に出る度に需要があります。

面接で人柄を確かめ
ギグワーカーの質を保つ

村田 峰人

村田 峰人 Mineto Murata

ギグワークス株式会社
代表取締役社長
1994年、シエラネバダ大学環境学部卒業。株式会社ウィルクリエイト入社。98年、同社取締役就任。以降、数社の代表取締役を経て2014年、スリープログループ代表取締役社長就任。19年8月の社名変更に伴い現職。

片桐 ギグワーカーの方たちのキャリアパスについて伺えますか。

村田 現在、弊社が発注している方の約40%が副業で、余暇を利用して月に数万円の副収入を得ています。一方、専業の方たちは、皆さん新しい技術を学んで個々にキャリアを形成し、単価の高い仕事を選んでいるようです。私の2倍以上の月収を得ている方もいて、努力がきっちり報酬に反映されている印象です。

片桐 働いても働いても生活できない、という状態に陥ることはないでしょうか?

村田 そうですね。選挙の開票作業など、イレギュラーなイベント案件はありますが、基本的には誰にでもできるアルバイトではありません。

片桐 ギグワーカーの皆さんは御社の名前で仕事をするわけですから、業務の質を担保する必要がありますね。

村田 マニュアルやeラーニング、OJTなど、相当数の研修をします。しかしマニュアルでカバーしきれない場面は必ず出てきます。そのため、最重視するのがコミュニケーションスキルなんです。

片桐 どう見極めるんですか。

村田 発注前に、スカイプも含め、必ず顔を見て面接を行います。その上で信頼できると判断した方に発注しますが、実は面接を通り発注にいたる方は現状10%程度。話し方や常識の有無を、それだけ厳しく判断させていただいているわけです。その代わり、信頼されれば仕事が増えて報酬が上がる。評価経済社会です。

片桐 ワーカーのみなさんの安全確保はどうされていますか? 例えばギグワーカーが個人宅で仕事をするような場合の対策は?

村田 今は企業案件が中心なのでチームで動く仕事が多いのですが、安全面の配慮をしたほうがいいと思われるケースの場合は、1対1になっても近くに第三者を待機させる、など配慮します。

労働力問題に光明
ギグという働き方

片桐 圭子

片桐 圭子 Keiko Katagiri

AERA 編集長

片桐 御社は3年連続で女性活躍推進企業である「なでしこ銘柄」に東証・経産省から選定されていますが、社員の男女比はどのくらいですか?

村田 男性56%、女性44%です。

片桐 女性活躍のために取り組んでいることはありますか。

村田 グループ各社とも、取締役会には意識的に女性を入れていますが、あとは普通に在宅・時短勤務の制度があるくらいですね。そのときどきで、ギグ的に対応しています。

片桐 ギグ的に、臨機応変に(笑)。

村田 大企業ではないので柔軟性が高いんですよ。結婚や出産で戻ってこなかった社員はいません。時短勤務でも部長に昇格できるし、全国に拠点があるので、夫の転勤に合わせて妻が異動することも可能です。

片桐 そろそろ「女性」にフォーカスしなくてもいい社会にならないものかと、AERAは思っているのですが。

村田 同感です。弊社は男女ともに活躍しているので、「なでしこ銘柄」の評価には正直、違和感もあります。

片桐 最後に「日本一のギグエコノミーのプラットフォーマーになり、労働市場に革命を起こす」というビジョンをお持ちですが、御社にとって革命とは。

村田 他国に例がないほど就労人口が激減する状況にあって、ギグワークは有効な選択肢です。働き方改革で生まれた余暇で収入を増やしたり、シニア層が社会とつながったり。これから本格的に、自分で働き方を決める時代が来ます。

片桐 課題は何だと思われますか。

村田 低賃金、福利厚生、ギグワーカーの孤独化ですね。低賃金に関しては、弊社が間に入り、企業と個人のより良いマッチングを行うことで避けられると考えます。福利厚生はこれからつくっていく予定です。孤独化対策は、主要都市にコワーキングスペースやシェアオフィスを展開しているので、ギグワーカーがリアルに交流できる場所と機会を提供できます。このハードは弊社の強みですね。グループ会社では美容師のフリーランス化支援を行うなど、我々が対象とするギグワーカーもIT技術者に限らず広がりを見せています。

片桐 社名変更に込められた思いがよくわかりました。ありがとうございました。

片桐圭子の編集後記

 対談を終えて、とても優しい方なのだなという印象を持ちました。社会にはいろいろな関わり方のギグワーカーがいらっしゃると思いますが、言葉の端々から一人ひとりへの真摯なリスペクトが感じられます。このリスペクトの有無が、ギグワーカーの立場を支える鍵なのではないでしょうか。「ギグワーカーの皆さんを守り、盾にもなる」とおっしゃっていましたが、日本の働き方がまた一段階、変化するのではないかという気がします。

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提供:ギグワークス株式会社